第40章 クリスマス
「…お菓子って…」
「あれー?お部屋にありませんでしたか?
青い箱なんですけどー…」
「……あれ、須磨さんなんですか?」
眉間にシワを寄せて睦は須磨に詰め寄った。
「え…あの、はい…」
睦はバッと俺を振り返る。
はいはい、須磨でしたね。
「そうだわ…」
静観していた雛鶴が
何かを思い出したかのように呟いた。
「それ、その箱。
天元様のお部屋に届けたの、私なんです。
ごめんなさい、すっかり忘れていました」
「へ?俺の?」
「はい。新しく出来たお店のお菓子が
手に入ったんです。
いつもなら大行列なんですが、
時間のせいか、たまたま並ばずに買えましたので
お裾分けと思いまして…。
今朝天元様に差し上げようと思ったのですが
ご不在でしたから
失礼ながらお部屋にお届けしておいたんです。
睦さんもいらっしゃらなくて…
勝手にごめんなさい」
「いや、それはいいけど…」
須磨が並んで手に入れたとばかり思っていたが
雛鶴が偶然買ってきたのか。
「須磨、お茶の間に置いてあったものを
持って行ったのね?」
「ごめんなさーい…」
「まったく…確認もせずに勝手な事をしたら
睦さん達に迷惑をかける事になるわ」
雛鶴は静かに、須磨を窘める。
だが、
『確認もせずに勝手な事をしたら』
のくだりは、俺らも耳が痛ぇな…
「須磨、あの箱、
何度か戻って来たんじゃねぇか?」
俺の発言に須磨はびっくりしたように
「来ましたぁ!何で知ってるんですか⁉︎」
目を見開いて見せた。
「それでお前もまた、こっちに戻したよな?」
「はい、だって寝てないけど
寝ぼけてたのかなって思ったから…」
「何言ってるの、この子は…」
雛鶴が呆れたようにため息をつく。
「混乱させてしまったのではありませんか?」
睦に向かって雛鶴は心配の目を向けた。
「いえいえ!大丈夫です」
「睦さん、
ほんとのこと言っていいんだよ?」
遠慮しているのを見抜いたまきをが
須磨を睨みつける。
「ほんとです!」
自分のひと言で須磨の運命が決まるのを悟り
睦は必死で本音を隠した。