第40章 クリスマス
「んぇえ?」
私は離れに戻ってびっくりした。
さっき天元様の部屋に置いて来たあの箱が
茶の間のテーブルに戻って来ていたのだから。
…何で何で?
私たった今、置いてきたのに。
さすがの私だって、
こんな昼間から寝ぼけたりするわけがない。
…いや、わからないぞ?
私の事だから
やったつもりでやってなかったのかも…?
でも、箱はちゃんと持っていたし
天元様の部屋にも行ったんだけど…。
私はその箱を持ち上げて感触を確かめる。
…うん、
確かにこれだ。
これだった。
絶対に持ってった。
とすると、
…私が母家からここに戻るまでの間に
天元様が瞬足で返しに来た…?
だけどそんな必要ある?
そんなに要らなかったかな?
でもこの箱がここにあるのは事実。
そうとしか思えない…
天元様には受け入れてもらえなかったと
そういう事なのかな?
こんな事をする人じゃないんだけどなぁ…?
小さな違和感を覚えながら私は
ふんっと立ち上がった。
しょうがない…
じゃ睦さんに渡しに行こう!
睦さんはお屋敷のどこかにいるはずだし
話をすればわかってくれるはず。
今は忙しいかもしれないけど
夜とか時間を作って一緒に食べてくれるよね?
そう思ったのに、
睦さんを見つける事ができなかった。
どうしようか迷った末に、
私は睦さんの部屋のテーブルの上に
それを置いておく事に決めた。
ちょっとここに残ってたら
すぐ帰って来るかなあ?
だけど主人のいないお部屋で
勝手に待ってるなんて失礼だよね。
そう思った私は
テーブルに向かって、そこに何か
小さな紙切れが置いてある事に気がついた。
なんだろうと手に取ると
綺麗に二つ折りにされたメモ用紙を開く。
『後で一緒に食べよう』
………
一緒に食べよう?
その割には、食べる物が置かれていないよ。
これは天元様の字に間違いない。
何を食べるつもりでいたのかわからないけれど
……ん⁉︎
コレ使えるんじゃない?
この手紙と、この箱を一緒においとけば
天元様からの贈り物って事になって
睦さんも勘違いしなくなる。