第40章 クリスマス
そうだ!
天元様にも見せに行こう。
せっかく珍しい物があるんだし、
天元様ならみんなで食べようって
提案してくれるはず。
睦さんも食べたいだろうし、
天元様や睦さんが関わってくれたら
まきをさんだって私を殴ったりしないだろう。
それどころか
納得してくれるに違いない。
そう思って私は
その包みを大切に抱えて、
いそいそと母家へと向かったのだった。
「天元様、失礼します」
襖の前に膝をついて声をかけるも、
…返事がない。
留守?
そう思って、
失礼ながらも部屋の中を覗いてみた。
でも中は、もぬけの殻。
まぁ年末のこの忙しい時期に
天元様がお出かけするのなんて
珍しい事じゃないよね。
…じゃあ、コレどうしようか。
私は手の中の箱をジッと凝視めた。
せっかく来たんだし
とりあえず、天元様に預けて行こう。
見慣れない物が置いてあれば
天元様なら声を上げるに決まってる。
私みたいに、勝手に食べようだなんて
思わないはずだから。
そう思って私は
天元様がいつも使っている文机の真ん中に
その箱をそっと置いてから
離れへと戻ったのだった。
買い物から戻り、
肩掛けを置きに自分の部屋へと戻った私は
見慣れない物をテーブルの上に見つけた。
私好みの青色の包み。
包み紙よりも濃い青色のリボンがかかっている。
奇しくも今日はクリスマス。
…その贈り物を彷彿とさせる綺麗な箱は
何故か私の部屋に置いてあって…。
私、の部屋だよね?
バカみたいに、襖の柄や部屋の中を確かめて
間違いがない事を確認する。
アレはなんだろう。
いや、わかってる。
新しくできた西洋菓子のお店のものだ。
大人気でなかなか手に入らない代物。
それくらい私だって知っている。
だって、食べてみたいなぁって
お店の前を通る度に思っていたのだから。
開業してからしばらく経つのに
毎日途切れない行列を横目に
私は既に諦めかけていたのだ。
さすがにあそこに並ぶ勇気はない。
珍しいお菓子を求めて、開店の何時間も前から
並ぶ人がたくさんいるのだ。