第40章 クリスマス
年の瀬が迫り、慌ただしさが増していく中…
俺は自分の部屋に戻って
文机の上に
何かが乗っかっていることに気がついた。
座布団の上に立ち、それを見下ろしてみる。
…どう見ても、贈り物。
小さめの箱…
厚みはあり、サイコロのような形のそれは
ここが自分の場所だと言いたげに
文机のど真ん中に鎮座していた。
……どっから来た。
爽やかな青い紙に包まれたその箱。
何もねぇとこから湧いて出るワケもない。
間違いなく、誰かがここに置いたのだ。
…誰が置いたのか、によるが。
この屋敷の中には
基本睦しかいねぇ。
さっきまで一緒に茶を飲んでいた。
…一緒にいたのに、
わざわざこんな事をするだろうか。
何気ないフリを装って
俺をびっくりさせてやろう計画か?
…いや、そんな事が睦に出来るだろうか。
俺ならやる。
喜ばせるためにする隠し事なんか
得意中の得意だ。
だが睦はすぐに顔に出る。
こんな事をしておきながら
俺に悟られないように会話をするなんて
なかなか出来る女じゃあない。
…だとしたら、じゃあこれは何だ…?
それを手に取り、
そうっと揺すってみる。
コトコトとわずかな手応え。
小さい割に重さもあって…
……そんな分析はいいが、…
これをここに置いたのは誰かって事だ。
何でだろうな。睦じゃねぇ気がする。
じゃあ誰なのかって、
…気持ちが悪ィが…
余所者ってことでて
でもそこまでわかっていながら、
誰なのかまでは、わからないままだった…
これは、…中身が食い物だ。
甘い香りがする。
しかもチョコレートだ。
だとしたらやはり、
差出人は睦なのか…
じゃあ、と俺はその箱を手に
睦の部屋に向かった。
例えばこれは睦が俺と一緒に
食べたいのだということなら
睦が持っていればいい。
俺は1人で食わねぇし。
「睦、入るぞ」
襖の向こうに声をかけたが返事はない。
少しだけ隙間を作り中を覗くと
主人のいない部屋の中は
心なしか淋しげで、
シンと静まりかえっていた。