第40章 クリスマス
「だって私の事ほっといてくれないし
家事なんか後でいいって
私に楽させようとばっかりするんだもん」
「それは…」
まぁ否めない。
睦はいつも、
『過ぎる』くらいに頑張るから
どうしても気になってしまうのだ。
もっと休んでもいいと思うんだよな。
真面目で勤勉なのはいい事なのかもしれないが
もっと気楽に楽しんだっていいじゃないか?
「私がここにいたら、
天元はそればっかり気にしちゃって
休まらないでしょ。それに…」
少しあたたまって来たのか
睦はその手を擦り合わせては
にぎにぎと両手の具合を確かめる。
ほどよく回復したのか
火鉢から手を離して、自分の胸に抱きしめた。
「それに、…何だよ?」
意味深に言葉を途切れさせたまま
続きを話さない睦に痺れを切らし
俺はつい、その先を求めた。
「…笑わないでね」
こちらを窺うような瞳。
…ん?
「笑う?俺が笑うワケねぇだろ」
何を言い出すのやら…。
「呆れないでね。茶化すのもだめ!」
「何だ何だ。そんな事しねぇよ……多分」
睦はにこにこ顔を引っ込めて
一瞬で不機嫌ヅラになった。
「…いや、絶対ぇな。
絶対ぇにしねぇから言ってみ?」
そうそう、多分、なんて事あり得ねぇ。
ちゃんと正しく言い直すと
いくらかマシな表情に戻り、
「向こうもあったかかったら、
こっちに来る言い訳ができないもん」
釘を刺されていなかったら
つい揶揄っていただろうなぁと思う…
なんだ、その可愛い考えは。
余計な事を言わねぇように
片手でパシっと口を押さえる…。
あぁ、まずい。
「相変わらず可愛いな」
少し落ち着きを取り戻した俺は
余裕を見せつけるためににっこり笑って見せた。
ギリギリの所で、
茶化しも笑いもしなかった俺に
睦はさっきの嬉しそうな笑顔に戻る。
「理由なんかなくても
いつ来たっていいんだぞ」
「…うん」
なんでこんなににっこにこなんだ…?
「火鉢なんかより俺の方が
よっぽどあったまれるのに?」
本を持たない方の腕を開いて見せると、
そわそわと体を揺らし
来ようか来まいか悩むような仕種をした。