第39章 輪廻〜if
「ウソばっかりついて…
そのくせに私がウソつくとすぐ殴る」
「そうか…」
先生は居心地悪そうに眉を下げた。
「でもよー櫻井、
おとなにもちっとはまともなのがいるって
証明させてくんねぇかなぁ?」
先生はちょっと困ったように…
でも、やっぱりまっすぐに言葉を紡ぐ。
「こうやって、
お前の居場所は俺が確保しといてやるよ。
他に頼るヤツがいねぇってんなら
俺に寄っ掛かってもいいからよ、
…まぁ、俺じゃ嫌だってお前が言うなら
もうどうしようもねぇけどな…」
…嫌じゃないよ。
私は嫌じゃないけど、
「先生が嫌になっちゃうよ…」
「そうか…?俺はそうは思わねぇけどな…」
ウソのない声ってわかるんだな。
すごく心地いい。
先生が囲ってくれたこの小さな空間のせい?
とっても安心するよ。
「お前がひとりで居るくらいなら
俺が助けてやりてぇと思うよ」
「…なんで」
「さぁ…?俺もひとりだから?」
自分に答えるかのような言い方。
先生自身にもわかっていないみたいだった。
先生も、ひとり。
「怖くなかった…?」
「怖ぇもなにも…。しょうがねぇだろ。
ひとりなモンはひとりなんだから」
なんて事なさそうな言い方をする。
…そんな簡単なものかな。
「そんなん考えてるヒマなかったよ。
もともと、体が先に動くタチなんだ。
俺は、何かありゃそん時に考える」
「…じゃあ私は、考えすぎ?」
「ンな事ねぇよ。何かが起きる前に考えるのは
自分を守る事に繋がるから悪い事じゃねぇ」
「なら何で先生は考えないの?」
「俺?俺はー…突発的な危機を
それはそれは上手いこと回避できる能力を
備えてるからだ」
「そうなんだ…。いいな…」
「…おい、笑うとこだぞ。
もしくはツッコミ入れろ」
「えぇ…?」
いつのまにか落としていた視線を上げると
目の前に楽しそうに笑う先生がいた。
「お前が笑わねぇと、
俺ただのイタイ奴じゃねぇかよ」
「……」
なんか。
近いなぁ。
…近い…けど、嫌じゃないな。
「そっか…ごめんなさい」
「謝んな!マジで痛ぇわ!」