第39章 輪廻〜if
「なん…でもありません…!
大丈夫だから…ほっ、といて下さい…!」
全身が恐怖で震え出し
私はうまく動かなくなった。
でも私は、必死になって
自分に言い聞かせる。
お仕事じゃない。
これは、お仕事じゃないんだって。
なにもない。
だってこの人は、私をガキ扱いしてる。
今は、お仕事の時間じゃないんだよ…?
うん。
わかった。
大丈夫…
ちゃんと、話もできる。
心を砕くには早すぎると思うし
多少無理やりだけど…
でも、助けてもらっている以上、
ちゃんとしなくちゃいけないの…
順序立てて、ちゃんと。
「何言ってんだよお前…いいからちょっと来い」
それでも止まらない先生の手が
私の肩に触れそうになって
「いやあだ‼︎」
つい本気で嫌がってしまった。
大丈夫だと言い聞かせて納得したばっかりだけど
触られるのはやっぱり嫌だ。
「え…」
私の本気を感じ取ったのだろう。
先生は絶句していた。
…そうだろうね、
先生からすれば、何もしていないのだろうから。
「来ないで!いいから!」
「ヘンに勘違いされても困るし
来んなってんなら行かねぇけど…
昨日みてぇにそこら辺で寝るなよ?」
少しだけ呆然としながら身を引いて
訝しげに私を見遣る。
「昨日って言わないで‼︎」
「何で怒ってんだよ…」
わけがわからないと首を傾げ
先生はスッと立ち上がった。
「……」
…行っちゃうんだ。
そう残念に思った自分に気がついた。
何でそんな事を思ったのかわからない。
だけど、先生が離れてしまう事を
少しだけ淋しいと思ったんだ。
「沸かしてやるからちゃんと入れ。
んでその湿布、剥がして来いよ?
湿気でうまく剥がれんだろ」
バスルームに向かいながら
先生は背中でそう言った…。
「その間に、…誰か連れて来るの?」
先生はぴたりと歩を止めて、
考え込んでいるのか
割と長い時間そのままの格好で動かない。
「……悪ィ。なんて?」
半身分、振り返った先生の顔には
意味不明、と大きく書いてあった。
「私の事お風呂に入れて、
その間に悪い人連れてくるんでしょ…?」
我ながらアホな質問だ。