第39章 輪廻〜if
「俺様にンなこと言うのお前くらいだ」
不満度マックスで
先生は分け終えたプレートを
私の方に押しやった。
「ほら、大好きな半分こ」
「大好きじゃないし」
「あーんもしてやろうか」
「だからきもい」
「俺様が食わせてやったら
100倍美味くなるぞ」
「へぇ」
「だからその目やめろ」
「こんな目にもなるわ」
「お前ほんとさぁ…」
そこまで言って、言葉を切った。
「……いいわ。食うぞ」
「途中でやめるのどうなの。
気持ち悪いんですけど」
「黙っ、て、食え」
フォークをビシッと向けられて
私はプイっと横を向く。
……なんか変な感じ。
妙なものに心を支配されながら
私は用意されていたお箸を持った。
そして目の前にある玉子焼きを頬張る。
甘くて、おいしかった。
ひと嚙みひと嚙み、ゆっくり味わっていると
「…箸の持ち方が綺麗」
突然よくわからない事を言われる…。
「誰に教わった?」
「何を?箸の持ち方を?」
「そう」
なんの話だろ…?
「誰にも。
幼稚園の時友達の見て自分でやったけど」
「そうか」
「なんで?」
「いや、よく頑張ったなぁ」
まんまるおにぎりをぽんと口に放り込み
先生はにっこりと笑った。
「…がんばった?」
「いや、チビの櫻井が
がんばって覚えたんだなと思っただけだ。
その姿想像するだけでいじらしいだろ?」
……何を言い出すんだろうこの人は。
意味がよくわからないけど。
えぇと…箸の持ち方を褒められた?
それとも、その持ち方を自分で覚えた事?
どちらにせよ、
何を言いたいのかがよくわからない。
…あ。
「あー……もしかして
どっか褒めなきゃと思って
無理やり探しまくった結果が、
箸の持ち方だったってこと?」
「そうなっちゃうのかよ。
俺は純粋に、
箸の持ち方が綺麗だと思っただけだ。
だいたいなんでお前を
無理やり褒めなきゃならねぇんだよ。
ワケのわからねぇガキだなぁ」
ガキ、かぁ…。
そんな扱いがちょっと嬉しくて、
下を向き小さく笑ってしまった。
「……そだね」