第39章 輪廻〜if
りんごジュースを
最後まで飲み切ったのを見届けてから、
「よし!じゃ戻るかー」
「…戻るの?」
先生はベンチから勢いよく立ち上がり、
「んぁ?戻るだろ。食い終わったんだから」
パーカのポケットから
自分のスマホを取り出して時刻を確認した。
「ほれ、そろそろいい時間だぞ。
お前んとこ次なんだ?」
「化学」
「うぇ!じゃ遅刻できねぇだろ」
眉間にシワを寄せて
先生は『シッシッ』をするように
手をヒラヒラさせる。
「ネチネチ言われる前にとっとと行けよ?
あ!スマホ、もう置いてくんじゃねぇぞ」
ビシッと指を差して
宇髄先生はちゃらちゃらと去っていった…。
ちゃんとすればきっとカッコいいのに
なんであんなだっさいつっかけ履いてんだろ。
化学の授業中。
さっき手元に戻って来てしまったスマホを
開いてチェックしてみる。
思った通り、
1分置きに入っていた着信。
ヘタすれば同じ時間にまた鳴らしていた。
メッセージも、
それはまぁひどい内容で…。
電話に出ない事への痛罵と恨み言。
…何もかもが私のせいだ。
そして、こんなに連絡がつかないというのに
私を心配する言葉がひとつもない。
それは見事なほどに。
はぁ、
と大きなため息をついたその時……
背中に凄まじい殺気を感じた。
振り返るのも恐ろしい…。
「櫻井…」
あー…
至っておとなしく過ごして来た、
この高校での生活…
それがこのごろ崩れて来ているのは
どうしてだろう。
どうして授業中だというのに
こんな事をしてしまったのだ私は…。
「今は、何の時間だ」
伊黒先生の美しい眼がギラリと光る。
…首に巻きついている
白くて長ーいものの赤い目も
同じく光っているような…?
「か、…化学。です」
「お前の手の中にあるものは何だ。それは今お前が言った化学と何の関係がある。その中に俺がやれと言った課題の答えでも見つけたか」
「いえ、これは、」
こちらが反論しようとすると、
蛇と共に凄まじい圧力がかけられて
私はもう黙るしかなかったのだった…。