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【鬼滅の刃】予定調和【宇髄天元】

第39章 輪廻〜if





「…ちゃんと食えるじゃねぇか」

顔も目も空に向けたまま
先生はボソリと言った。

「今日は食べられる」

昨日は何事もなく
穏やかな時間を過ごせたから。
少しだけ、体も気持ちも楽だ。

男の所にでも行っていたのか
母親にも会わずに済んだ。
それどころか声も聞かずに済んで…

でも多分このスマホの中には
もの凄い数の着信と
罵詈雑言を並べ立てたメッセージが……。



そんな事を考えているうちに、
ある事が頭を掠め、
咀嚼するのも忘れて
私はスマホを見下ろした。

真っ暗な画面。

「……」

電話がくれば、スマホが鳴るし…
いや、マナーモードだからバイブだけど。
メッセージが届けば通知が来る。
しかも、バナーが表示されてしまう。
ロックの解除をしなくても、
下方にスワイプすれば
未読のメッセージは見る事もできる…

…わざわざ先生が、
私の所に来た理由がわかってしまった。

それらを見たからか…。

「食える時にはちゃんと食っとけよ。
これもやろうか?」

長い腕がニュッと伸びて
目の前に差し出されたのは
紙パックのりんごジュース…

「……」

「悪ィな。牛乳もうなかったんだよなー」

「………」

「りんごジュース、嫌いか?」

嫌いじゃない。
むしろすき。

ジッとその箱を凝視めながら
咀嚼を再開した私に、

「飲めるならやる」

ふりふりとその箱を振って見せた。
飲み物を買い忘れた私は
咄嗟にそれを掴み、

「…ありがと」

自分の方へと引き寄せた。

「おぅ。しっかり飲め」

大きな手は速やかに私の視界から消えた。
そうしてまた、
もぐもぐと食べ出した私の横で
先生はやっぱり何にもせずに
ジッと空を凝視めている。

…なにしてるんだろ。

私に訊きたい事あるんじゃないのかな。
あるよね絶対。
訊かなくていいのかな。
食べ終わるのを待ってるんだろうか。
結構律儀だったりするのかも…?

あれこれ考えていると、余計に味がしない…

いつその話を切り出されるのかと思うと
もう気が気じゃなかった。

それなのに、
私が半分のパニーニを食べ終えて、
私が買った方のパンも食べ終わっても
先生は何も訊いては来なかった。


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