第39章 輪廻〜if
「お前優等生かと思ってたが
割と困ったちゃんなのね」
困ったちゃんてなんだよ。
私がこうなったのは私のせいじゃない。
何も知らないくせに
好き勝手に言いやがって。
「泣いてねぇでとっとと食え。
一緒にいてやるから」
「いなくていい!もう行って!」
「1人メシは美味くねぇだろ。
話なんかしてなくても居るだけで全然違う。
いいからほら、」
来い、と先生は手招きする。
「……」
何言っても無駄だ。
聞き入れてはもらえないみたい。
「…中途半端に関わろうとしないでほしい」
天国から突き落とされるのが
どれだけツラいか。
天国が天国であるほど
地獄がツラくなるから、
天国は平凡でいい。
楽しくあってはいけないの。
救われてはいけないの。
結局私の住処は、地獄なんだから。
「…なんも訊かねぇしなんも言わねぇから」
先生は困ったように笑って見せた。
私が何を言っても食い下がる。
それでも…
助けてくれと素直に言えない私。
だって、助けるって言ったって、
じゃあこの先どうなるのって…。
どこからどこまで助けてもらえるの?
卒業するまで学校にいられるの?
私も犯罪に加担していた事になる?
帰る場所は、ある?
不安が、涙になって溢れ出した。
最後に泣いたのなんて、
どれだけ前か思い出せないくらいだ。
しかもこんなふうに人前で。
「しょうがねぇなぁ…まったくもう」
半分のパンなんか
もうとっくに先生のお腹の中。
先生はベンチから立ち上がって
私の目の前までやって来た。
近づかれたくない私は
1歩2歩下がったけれど、
涙が邪魔をして後退りも上手くできない。
「なぁ、コレ。
無ぇコト気づいてねぇの?」
「え…?」
流れる涙を止めたくて
何度も擦っていた目は
もうぼやけてしまって
ほとんど機能を果たしていなかった。
必死になって目を凝らすと
ぼんやりと見えたのは、私のスマホだ。
「スマホよりマスクが大事なんだな」
先生は私のスマホ画面を
親指で撫でていた。
そうか。
昨日、準備室のペンキの缶の所にあったのに。
鞄だけを手にして
そのまま出てきてしまったんだった。