第39章 輪廻〜if
そう思ったら
こんな所に2人でいるのが怖くなって来た。
自分の両腕を抱き締め小さく震えながら
このイスの背もたれが大きくて良かったと思う。
だって震える私を、隠してくれるから。
「…なぁ、それらはさ、
何があったか訊いてもいいか?」
「……」
「言いたくねぇか」
「…」
言いたい。
誰でもいいから、助けてくれるなら。
でも、それはこの人じゃない。
だって信用できない。
「そのスカートが、夏用のワケも?」
「…!」
何を。どこまで…?
私の変化を全部わかった上で
ここにとどまらせようとしていたんだ。
額の青あざ。
マスクで隠した頬。
口の中の切り傷。
痣のある腕。
極め付けは、夏用のスカート。
確かに、良く見ればわかるよ。
夏用と冬用の違い…
だけどそんな事に気づくのはさ、
もうすでに何かに気づいてる証拠だよ。
そういう目で見てるんだ。
アラを探してる。
動揺でガタっと立ち上がった私。
「言いたくねぇなら言わなくていいわ。
だが俺は、…お前が恋人か親に
ひでぇ事されてんじゃねぇのか、
…って疑ってるけど」
私は背を向けたまま、小さくかぶりを振った。
「そっか…まぁ言えねぇよな…。
でも櫻井よぉ、
今日もそいつんとこ、
行かなきゃなんねぇんじゃねぇか?」
待って待って、早いよ展開が。
こんな早くに答えを出すなんてあり得ない。
気づかれたらいけないのに。
「おかしいって。そんなわけない」
このまま黙っていたら、すべてを
肯定した事になってしまうような気がして
私は少し笑いながら余裕を見せてみる。
「そうか?だけどそれ、…デコの。
ドアでぶつけたなんてウソだよな?」
「ほんとだよ」
「そのほっぺたはよ?それもドアか」
「これは…」
「腕はどう見ても手型だったな」
私が答え切る前に
次の言葉を被せてくる。
言い逃れができなくなるように。
…だめだ!ここは息が詰まる。
息が、出来なくなる。
期待はしない。
私は自分の足であそこから出て行くの。
誰の手も借りない。
誰も信じない。
私の力で、抜け出すんだ。