第39章 輪廻〜if
じゃあなと言うと
逃げるように準備室を後にする。
…何であの先生がこんな事をするのか
私には全然わからなかった。
たまたま見つけてしまったからなんて
ただの野次馬根性っていうか
…その場凌ぎっていうか。
立場上、放置したら
『後々面倒』だからだろうな。
そういうの、うざいんだけど。
手に持ったお弁当を見下ろしたまま
私はしばらくそこに立ち尽くしていた…。
「……食ってねーぇじゃん」
本日最後の授業を終えて戻ってきた先生。
最初のひと言は
めっちゃくちゃなしかめっ面と共にやって来た。
「……食べたよ」
「そんなん食ったうちに入るかよ」
「入る」
食べたものは食べたんだ。
…4分の1とは言え。
「いっつもこんなんか?」
私が残した4分の3を
残念そうに見下ろしながら、
宇髄先生はどこにもぶつけられない気持ちを
整理しているようだった。
「…たまに」
「せめて肉だけでも食えばいいものを」
「…ごめん」
そうだよ。
せっかくくれたのに、こんなに残したんじゃ
先生の気持ちを踏み躙ったのと同じか。
でも本当に食欲がなかった。
食べる力が湧いてこなかったんだ。
「いや、いいよいいよ。
食いたくもねぇ時に
無理やり食う方が身体に毒だ。
食うのってよ、
思ってるより力いるしなぁ…?」
その言い方が、まるで
生きるって大変だよな、
って言われてるように聞こえた。
私を見下ろす瞳が何か言いたげに伏せられる。
だから私は、何も訊くなと睨み上げた。
「いつもこんな少食か?
買ってたのも菓子パン1個だったな」
その効果も虚しく、
先生は何事もなかったかのように訊いて来る。
…訊くのかよ。
「…いっつもパン1個。食べない日もある」
「不健康」
「生きてるからいいでしょ」
「だからそんなチビなんだよ。
…出るとこ出てんのにな」
「っどこ見てんだバカ!」
カッと頭に血が昇り
私はワークチェアをくるっと回転させた。
「くく、男なんてそんなモンだろ」
背中から軽い笑い声が聞こえてくる。
でも私は笑えない。
こいつも、男だ。