第39章 輪廻〜if
肘と手首のちょうど真ん中に、
くっきりと握られた形の痣が出来ていた。
朝それを見つけて、すごくショックだった。
心抉られる置き土産だ。
久しぶりに泣きそうになったよ。
…それを見た先生は、どう思っただろう。
「動きがぎこちなかった…
まぁ見えはしなかったが。
力入れたりすると痛むんじゃねぇのか?」
確かに、手を強く握れなかったり
動かす向きによってはすごく痛い。
…それが全部、この人には見えていたのか。
気遣わしげに訊かれたのに、…
どうしてだろう。
すごく頭に来た。
知られたくなかった事を暴かれて、
しかも全部言い当てられた…。
それがたまらなく嫌だった。
全部お見通しかよ。
俺はすげぇだろって言いたいのかよ。
「知らない。もうマスクいらない」
1人にバレた。
もうあと何人に知られたって同じ事だ。
机の上にあった鞄を持って先生の脇を抜け
私は美術室の方へと向かった。
「待て待て。話は終わってねぇぞ」
私に触ったらいけないと学んでいる先生は
ドアの前に立ちはだかり私の行く手を塞ぐ。
…この巨体はドアを隠す程。
私からも触れたくない。
故に押しのけられない…
「ここにいろって。
今日に限って6限も授業なんだ」
「関係ない。どかないと叫ぶ」
「叫べばー?困るのお前だろ」
「このケガ先生の仕業だって思われるかもよ?」
脅しのつもりで言ったのに、
「残念。俺の手の方が断然でかい」
片手を広げて私に見せた。
余裕たっぷりに。
この腕に残された痣の大きさとは
合わないって言いたいのだろう。
「シンデレラかよ!もう帰して!」
「そんなに帰りてぇのかよ。
そんな事になってんのに?」
「関係ないだろ!」
「お前そんな激しい性格だったのな」
「うる、さいなぁ‼︎」
学校ではおとなしくしてた。
目立たないように。
悪目立ちしないように。
先生にも目をつけられないように
校則も守ったし勉強もがんばった。
友達に悪い印象を与えないように
逆らわずにニコニコしていたんだ。
それが、一瞬で台無しだ。
「わかったわかった。
俺がお前のメシ取っちまったからだよな」