第39章 輪廻〜if
その向こうに、
私の鞄が置いてあるのが見えた。
って事は。
もしや、
……帰った事になってる?
何がどうなっているのか
全部わからない。でも、
ここから出る事も出来ないし
今ここに居る事を知られてもいけない。
だって後々、めんどくさいから。
私は開け放たれた窓の前に立ち
そこからの景色に目を向けた。
私の教室は2階。
2階分上がっただけで
こんなにも景色が違うんだな…。
そうだ。
ここは4階だ。
だから先生いたのかな。
窓から吹き込む冷たい風が
私の全身を冷やして行く。
寒いのは嫌いじゃない。
窓枠に手をついて目を閉じると
私も風になったみたいだ。
ひとしきりそうしていた私は
ふと目を開いた。
さっきまで明るかった空は
どんより曇り空になっていた。
道理で寒いわけだ。
雨降ってきたらやだなぁ…。
「…そっから飛び降りんのだけはやめてね」
「!」
いつのまにか
美術室と繋がっているドアから
先生が入ってきていた。
ドアが開いた音どころか
終業のベルすら聞こえていなかった。
「ここから飛び降りたって発覚したら
俺が面倒だからなー」
なにそれ
自分の心配かよ!
「飛び降りない!」
「そりゃ良かった。
そんなとこで思い詰めたみてぇに
下見てるからてっきり」
重い話を、
次の授業の準備をしながら
テキトーに流す先生。
「……」
そうしようと思った事もあるけど。
何で私の方が
そんな事しなくちゃならないんだと
いつもそんな疑問が頭をよぎるんだ。
私が死んで、
金儲けの道具がなくなって…
あの女が困ってる所を想像したら
そうしてやりたいとも思うけど
結局私が死んだら
あの女の困った顔なんか見られやしない。
私はいつか抜け出して
こんな生活を終わりにする。
大人になって、
ちゃんと働いてまともな生き方をしたい。
その時に、あの女をこてんぱんにしてやるんだ。
だから絶対に自ら命を絶ったりはしないの。
「帰る」
「帰れると思ってんのかよ」
忙しそうなフリをしてるようにしか見えない。
だってこっちをチラッとも見ない。
「思ってない。マスク返して」
無いと帰れない。