第39章 輪廻〜if
「…っひ、‼︎」
声にもならない叫びが私の喉に絡まった。
即座に振り払った私を見て
先生は不審そうにしている。
「悪ィ。びっくりさせたか?
でもコレ…」
振り払ったはずの手がまた私の腕を取った。
その途端ゾワっと鳥肌が立ち
「いやぁッ‼︎」
喉が潰れてしまいそうな程の声が出る。
自分でも、びっくりするほど…。
そして、腕を掴んでいたその手も
即座に離された。
「おい!なんもしてねぇぞ!」
何も…?
なにも…
「…ごめんなさい、」
私は痛み出した頭を抱えて
渡り廊下の手すりにもたれかかる。
「…ちょっと来い」
先生は私の肩に触れようとして
クッと動きを止めた。
私が、おかしなくらい身を竦ませたからかな。
「…触るぞ肩。叫ぶんじゃねぇぞ」
念を押されたけれど、私は首を横に振る。
「じゃ触んねぇからついて来い」
「いやだ」
眩暈がする。
握った手すり。
その手の上に頭を乗せて
私は動けなくなった。
「…わかった。ならそこにいろ」
「!」
突き放すような声に、
おでこを手にくっつけたまま
ころりと頭を横に向けると、
見えたのは去っていく先生の背中。
あぁ…行っちゃうの…
みんな私から…?
強い眩暈に襲われて
私はその場に座り込んでしまった。
そこまでは
はっきりと覚えていた。
鼻をきかせると、
その空間は独特な匂い。
湿気を含んだ木の香りと、
絵の具の匂いと…。
遠くからはたくさんの人の気配…
目を閉じていてもわかる、狭い部屋の感覚。
窓が開いているのか
冷たい風がたっぷりと吹き込んで来る。
非日常の中に身を置いたみたいで
ちょっと嬉しくなった。
ベッドとは違う、でも柔らかいものに
寝かされているみたい。
こんなよくわからない場所に
いつまでもいて良いものか。
そう思って目を開けた。
…どう見ても、学校の天井だ。
目だけをぐるりと見回してみる。
汚れた筆たち、大きなイーゼル。
棚から溢れ出したキャンバスと、
並べられた石膏像。
どう考えても、美術準備室。
美術、と言えば思い当たる人物が1人いる。
あぁ…