第39章 輪廻〜if
「違うって何だ。生きてんじゃん」
「違う。先生を見たかったんじゃない」
その先の雲を見たかったのに。
「失礼なヤツだな」
不満たっぷりに眉根をよせる先生。
「……」
「何してんの、こんなとこで」
先生こそ何してんだろ。
「お前櫻井だろ?いつも1人でいるよな」
そういうあなたは美術の宇髄先生です。
寝転ぶ私の隣にどすんと座った。
…座るんだ。
「おー、コレ……お前の昼メシ?」
菓子パンの袋と牛乳を手に持って
嬉しそうに声を弾ませた。
ただのパンと牛乳。
よくあるチーズの
「なぁコレもらってい?
代わりに俺のやるから」
蒸しパンだ…
え…?
閉じていた目を開けそちらを見やる。
その光景を見て私は目を剥いた。
だってもう食べてるんだもん。
…何なのこの人。
「コレ食いたかったのにさぁ
売り切れてたからよ。
ちょうど良かったわ」
ちょうど良かったって…。
私あげた覚えないんだけど。
ズズーって汚い音を立てて
牛乳まで飲んでくれちゃって…
「……」
「……」
「…お前ココどしたの?」
先生は自分のおでこを指差した。
あ…っ!
まだ青くなってるんだった。
寝転がっている私の前髪は
重力のまま流れていておでこは全開だ。
言い訳…なにか。
「ドアにぶつけた…」
私はがばっと起き上がって、
慌てて前髪を掻き寄せる。
「ヘェ…。櫻井の声、
聴いたの今日が初めてかも」
最後のひとかけを口に放り込んで
先生はモツモツと咀嚼していた。
ジッと、何か言いたそうに私を見ながら…
これ、飲み込んだ後に
絶対追加の質問が飛んでくるやつだよ。
めんどくさ。
「私もう行く」
スマホを手に持って立ちあがろうとした所へ
「そのマスクも関係あんの?」
鋭く切り込んでくる先生。
もー……
「朝から喉が痛いから」
立ち止まったら終わり。
根掘り葉掘り訊かれて面倒な事になる。
私にとってもっと良くない事が起こる。
逃げなくちゃ。
そう思って1歩踏み出した私の腕を、
大きな手が掴んだ。
強い手の力。
私の頭の中で、
フラッシュバックが…