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【鬼滅の刃】予定調和【宇髄天元】

第39章 輪廻〜if



























ドアに鍵を突っ込んだ時、
ゾワリと背筋を冷たい物が走った。

…大丈夫だよ。
いつものこと。
大丈夫。

自分にそう言い聞かせながら
私はドアを開けた。

途端に聞こえてくる、
高いのと低いの、2種類の声。
私はただいまも言わずに靴を脱いだ。

寝室にカバンを投げ入れて
自分もそこへ入りドアを閉めようとした…が、
出来なかった。

外から押さえられていたから。
振り向くと、
胸焼けがしそうなくらいご機嫌な母の顔。

「睦!ただいまくらい言いな。
ほんと、なってない子」

そりゃあ、あんたの子だからさ。

「こっち来な、お待たせするんじゃないよ」

「……帰ったばっかだよ。
着替えもしてない」

「今日はそのままでいいから。
早くおし!」

…制服で、って…。
どんな変態だよ。

嫌気がさして動かずにいる私を
もどかしく思ったのか、
母は勢いをつけてドアを押し開け
腕を強く掴んだ。
そのまま引きずるにようにして
リビングまで連れて行かれる。

敷かれたラグの上。
そこに直に座っていた
知りもしない男の方へと放り出された。
勢いのまま、
その男の胡座の上になだれ込む。

知らない匂い。
今日はこいつの相手。
もう文句のひとつも出てこない。

「無愛想だけど具合はいいって評判ですから
どうぞお好きなように」

実の母親の言葉とは
とてもじゃないが思えない。
でも絶望なんてもうしない。
そんなものすらどこかへ行った。

じゃあねとばかり私に目配せをして
くるりと背を向けて去っていく母。

この背中を、何百回見送っただろう。
泣き叫んでも、
何度助けを求めても、
ちらりとも振り向かず
そのまま玄関を出て行く背中。

あそこに、尖ったナニカを突き刺してやれたら…

そう思った瞬間、
ぐるりと視界が反転した。

「あんな母親を持って、君も憐れだな」

厭らしい笑みが
真上から私を見下ろしていた。
やけにギラついた目が気持ち悪い。

母もかもしれないが、
私にはお前が憐れに見えて仕方ないよ。
こんな犯罪を平気で犯しておいて、
悪いとすら思わないお前がな。


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