第38章 金魚の昼寝
…飽きないのかな。
そんなもの眺めて。
寝てるだけなんて可愛いわけないし。
だってよだれ垂らしてるかもしれないよ。
…それ見られたらかなり落ち込む。
でも、起きた時にそばにいて欲しいと
そう言ってしまったのは他でもない私だし
眠くもならないなら、
それを見て時間を潰すより他は
手立てがないのかもしれない…。
私はこの人に、
かなりツラい事を強いているのかな…
今更そんな事を考えている私は
天元を笑わせる程度に
しかめっ面をしていたようで。
「…なんだその顔は」
くくっと喉を鳴らした天元が
眉間をツンと突いてから
私のほっぺたに優しく触れた。
「…まらない、ぁって」
「んー?だめだ、何言ってんのかわかんねぇ」
楽しそうに笑って私に擦り寄ってくる。
つまらないかなって言ったんだよ。
でも天元は追究する気はなさそうだ。
なら私も、そのままでいいかな…?
でも気になる事がひとつある。
「…んで、んなたのしそ?」
あ、これなら伝わった気がする。
「おぉ、」
理解できる言葉を私が話した事に
ぴくりと眉を上げ、
「睦の変化が可愛いからだよ。
それが俺のせいなら余計にな」
あいも変わらず歯の浮くような台詞を
いとも簡単に言ってのけた。
これだけ言われて慣れない私もどうかしてる?
だけどさ、照れるものは照れるよね。
こんなの何年言われ続けても慣れる気がしない。
「そ、ですか」
でもそれがバレるのはちょっと悔しい。
だから、出来るだけ何でもないように
そっけなく答えたんだ私は。
それなのに、
「おやぁ?照れ隠しですか」
この人にはなんでわかるのか?
結局私如きでは、
天元にはまるで敵わないという事なんだよ。
諦めて素直になれと…。
「…ぅん。…れかくしだよ。
…ってさ、か、わいがってもらうの
う、れしぃ、しさ…好き、だけど
それ、がバレたら、くやし、んだもん」
掠れた声をゆっくりと押し出して
私は彼にちゃんと伝えた。
開き直ったわけじゃないよ?
なんだかもう、隠す意味もわからなくなっただけ。
「嬉しいし、好きなのかよ…」
呆けたように繰り返し
天元はぽかんと私を見下ろした。