第38章 金魚の昼寝
正直、笑うしかなかった。
可愛いわがまま。
しかも控えめな伝え方をするのだ。
『邪魔』だと言わない所が睦の可愛さ。
はっきり言っても構わねぇのに…。
でもそうしない所がいじらしい。
ちゃんと風が当たるよう、
胸の上に引き揚げてやると
今度は俺の肌が冷たいと言って
熱を持った頬を何度も擦り付けてきやがる。
睦の方からそんな事をしてくるのは珍しく
全身をよからぬモノが駆け抜けた。
…睦だがな、
俺はちゃんと言ったよな…?
やめとけ、って。
カゼでもひいたのかと思わせる程の熱い唇。
合わせて、探ると
互いの体温が溶け合ったかのような錯覚に陥る。
小さな隙間を作ってやると
は、と短くも艶っぽい吐息が俺の口唇に触れ
誘われるようにまたそこへと嚙みついた。
「…っ、ふ…」
さっき、
こいつが俺の肌に頬を擦り付けた時のように
俺もしつこく睦の唇を楽しむ。
ただどうも、体制が悪い。
上に乗られるのも嫌いではない。
むしろ燃える事もあるけれど…
ただ、なんせ睦は小せぇから
このままじゃ口づけもままならねぇ…
仕方なしに、
小さな身体が滑り落ちたりしないよう
両腕でしっかりと抱え、ごろりと横臥する。
落ちるとでも思ったのか
睦は慌てて俺にしがみついた。
そうされて、図らずも深まる口づけ。
睦の背を畳に乗せ
片肘を突いたままの俺は
自分の体を支えながらその上に覆い被さった。
しがみつかせたままの睦の腕は
俺を軽く抱き寄せているように感じて
拒否されない悦びが胸の内に押し寄せる。
重なる唇を舌で割り、その奥へと侵入すると
肌よりもまだ熱い咥内が俺を迎え入れた。
角度を変えてより深く貪り
小さな舌を絡め取る。
「…んん…、」
いやいやと首を横に振る睦を
治めるように、
大きく頬を撫でてやった。
普段なら、あっためてやる、んだろうが
今日に限っては冷やしている事になるのだろう。
それでもやっぱり気持ちがいいのか
首の後ろに回されていた手が
肩を撫で腕を伝って、
自分の頬に押し付けるように
俺の手の甲に添えられた。