第8章 続
「睦様、
長いことうなされてたんですよ!
3日間眠ってました」
「そんなにですか⁉︎それは…
助かりました。ありがとうございました」
私は佇まいを直し、頭を下げた。
「睦様、困ります!頭を上げて下さい」
雛鶴さんは優しく言った。
…
「あの…その、睦様っていうの、
やめていただけませんか…?」
ひどく居心地が悪いし。
「お気に召しませんか?」
「お気に召さないというより…
そんなふうに呼ばれるような者ではないので…
慣れないし。
できれば普通に…」
なぜそんなふうに呼ばれているのかがわからない。
「睦さん、ならよろしいでしょうか」
「はい、それくらいでお願いします。
…で、…お2人は、どなたでしょう?」
面識はないと思う。
だいたい…
「どこから入ったんですか…?」
…あれ、ちょっと怖くなってきた。
私は2人を見ていられなくなってきて、
座ったまま、ずりずりと後ずさった。
「あ、別にあたしたち、怪しくないです!」
「須磨、ちょっと…」
須磨さんが私の前に膝をつく。
私はびくっとすくみ上がってつい、
須磨さんと目を合わせてしまった。
「だってあたしたち、天元様の嫁なので「須磨‼︎」
…
「あの…」
「…睦様、今のは…っ」
雛鶴さんは須磨さんの口を塞いで抱え込み、
私の方を振り返る。
…また様って呼ぶし。
「様はやめて下さい…。
雛鶴さん、須磨さん、
長いことありがとうございました。
ご迷惑をおかけしました。
おかげさまですっかりよくなったみたいです」
「睦さ…ん、聞いて下さい!私たちは…」
「あんなに動けなくなるとは思わなかったので
本当にありがたかったです」
私がにっこり笑ってみせると、
「睦さん!」
慌てる雛鶴さんに向かって
「もう大丈夫です」
ぴしゃりと言うと、雛鶴さんも、
口を塞がれたままの須磨さんも
息を詰めてハッと私の方を見た。
一瞬ひるんだものの、
意を決したように雛鶴さんが口を開いた。