第8章 続
「…睦様!」
静かに襖が開いたと同時に、
くったりと倒れていた私を
誰かが抱き起こしてくれる。
誰…
家の中に、知らない人がいる…
「熱が高い。
睦様、お薬、飲んで下さいね」
キレイな声。
その人の腕に抱えられ、
私は小さなガラス瓶に入った液体を
口に流し込まれた。
「大丈夫でしょうか?」
「大丈夫よ、今お薬を飲んで下さったから。
熱いお湯とお水をお願いしてもいい?
私は睦様のお着替えをするから」
「はい」
あれ、声が2つだ。
ここは、私の家じゃなかったかな?
…ダメだ。頭が回らない。
もう意識も、保てないかも…
目を開くと、いつもの天井があった。
明るい。
…あれ、私、どうしてたんだっけ。
仰向けで、多分、布団の中。
目だけをキョロキョロさせると、どうやら私の部屋。
それに、開いている雨戸が見えた。
私はくるっと、そちらに顔を向けた。
…雨戸、開いてる。
私の大好きな秋の風が吹き込んでくる。
心地いいな…。
庭を眺めていると、私の顔に影がさした。
ぱっと振り向くと、
可愛い女の人が私を覗き込んでいた。
「………っえ⁉︎」
誰⁉︎
私は肘をついて、少し飛び退いた。
「っどちら様ですか?」
そう尋ねたちょうどその時、
部屋の襖がスッと開き、もう1人、
きれいな女の人が現れた。
「…えぇ⁉︎」
どうなってるの⁉︎
私はその2人を交互に見遣る。
「睦様!お目覚めですか、よかった」
…睦様?
「何ですか…あれ、どちら様でしたっけ?」
知り合いくらいの勢いで
普通にここにいる2人に見覚えなんかない。
…はず。
「申し遅れました。私、雛鶴と申します」
「須磨です」
…
「そう、ですか」
……
「えぇと…で…」
誰だっけ。
どうしよう、私忘れちゃったのかしら。
知り合いだったのかな…
「睦様、すっごくお熱高くって大変でした!」
あ、
「そうでした。あれ、もしかして…
看病して下さってましたか?」
途切れ途切れの意識の中で、
この2人の声を聞いていた気がする。
「はい、ずっと!」
「…須磨」
雛鶴さんは窘めるように須磨さんを呼ぶが
須磨さんは意に介さず続ける。