第37章 初恋
「いやいや、どう見ても好きだったね」
「なんでわかるの」
「お前の事なら何でもわかんの」
「…自意識過剰なんじゃ…」
「なんか言ったか」
じろりと睨まれ、
「いいえ」
私は口をつぐむ。
口は災いの元…
と、思った時には遅かった。
「…あの、重たいのでどいて戴けると…」
「どくワケねぇだろ!」
「なぁー…」
「……はい?」
「…なんか、機嫌悪ィよな?」
「えぇっ⁉︎私ですか?」
驚いて勢いよくこちらを見上げる睦。
こいつにぴったりの
小さめの布団に並んで横になりながら
何となく様子の違う睦に探りを入れる。
「胡蝶と歩いてたからか?
ケガさせたからか…
あぁ、さっき無理やり触れたから?」
「よっ余計なこと言わないで下さい!」
真っ赤に染めた頬を両手で隠す。
「でも足は痛かったよな…」
あの時、
『今ちょっと1人にして下さい!』
そう言った睦。
俺の腕から逃れる為に
上手にしゃがんですり抜けた睦の肩を
ぐっと咄嗟に掴んだ瞬間、
自分の体を支え切れなくなったのか、
ぐしゃっとその場にすっ転んだ。
そのせいで足首を捻挫…
愛しい女にケガをさせるなんて
あっちゃならねぇ事なのに。
掛け布団が小さい為に、
2人の腹に横向きにかけた。
故に、脚は放り出されたまま。
肘枕をして睦の足を見遣る。
…どうしても気になる。
俺のせいでこうなった。
「ちゃんと手当してもらったし大丈夫です」
「大丈夫じゃねぇよ…腫れてんのに」
「私が大丈夫だって言ってるのに…」
「なら何で機嫌悪い。全部か?」
「どれも違います!」
「ムキになるとこが可愛いな」
「可愛くない!」
「何で機嫌悪ィのか言え」
こうやって翻弄するような話し方をすると
睦は割と素直に吐く。
「何で私の機嫌が悪いと思うんですか?」
「そんな顔してる」
「……そんなふうに見えるのは
宇髄さんが悪い事したなぁって
思ってるからですよ」
……それは一理ある。