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【鬼滅の刃】予定調和【宇髄天元】

第37章 初恋





泣くほどのケガかよ。

そんな事より、
早くちゃんと話がしたい。
離れていた間に、何があったか
睦の話を聞いてやりたいし
俺も聞きたい。

可愛い声も、
楽しそうに笑う顔も…
すっげぇ楽しみにしてたんだ。

元気だったか
ちゃんとメシを食ってたか
店はどうだったか
妙なヤツには出会わなかったか
他に変わった事はなかったか
俺のこと忘れてねぇか


まだまだ聞きてぇ事は山のようにある。
それなのに…。

俺の腕に触れる睦は
今にも泣いてしまいそうだ。

睦の、そんな顔を見にきたワケじゃねぇ。
だからって
こんな顔をさせるなら
いっそ来なきゃ良かった、とも思わねぇ。

隣に座る、小さい身体を抱きしめてぇなぁ…
でも今俺が動いたら
こいつは本気出して怒るのだろう。
そして、溜まりに溜まったあの涙を
ぼろぼろこぼすのだ。

それはそれで可愛いけれど。
やっぱり笑ってもらいたい…
睦の笑顔は、
俺のすべての力の源だから。

仕方なくおとなしくしている俺の腕に
丁寧に包帯を巻いて行く。
随分と上手くなった。
最初のうちは包帯なんか巻けなくて

…きっと、やった事がなかったんだな。
包帯を巻かなければならない人間が
誰もいなかったという事なんだろう。

最初の頃、
足を怪我した睦に
包帯を巻いてやった時、
こいつはすごいだ上手だって
ベタ褒めしてくれたっけ。

「睦…上手くなったな」

「宇髄さんの、せいです…!」

「そうだな。…手間かけて悪ィな」

「……」

それには答えずに
包帯の終わりをきゅっと結んで

「終わり、ました…」

ぽそっとひと言告げた。

俺から離れて行く手。
それが許せなくて、咄嗟に掴むと
驚いてこちらを見上げ
思い切り目を見開いた。

「わ…!」

急に引き寄せられて更に驚き
次の瞬間には簡単に腕の中…。

あぁもう…最高のご褒美だ。

睦は膝立ちのまま
深く俺の身体に沈み込み
少しも抗わずに
でも抱きつく事もなく
ただそうされていた。

もしかしたら泣いているのかもしれなかった。
そうだったとしても、
こうやって抱きしめてやれる時ならいいか…


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