第37章 初恋
「睦が、あんまり綺麗すぎてな…」
「…えぇ?」
「眩しくて…俺みたいな汚れた手で触れるのは
心の底から気が引けたよ」
「…なに、言ってるの…?
天元のどこが汚れてるの?」
目をまん丸にして、
睦は切なそうな声を上げる。
「この手は、みんなを守った優しい手でしょう?」
そう言って、俺の手をぎゅっと握ってくれた。
…俺が何をして来たか、
お前は知らねぇだけなんだよ。
でもそんなこと知って、
一体なんになる…?
知らなくても良い事がある、…ってのは、
俺の独りよがりだろうか。
知られた後の、
睦の反応を恐れているだけだ。
「天元…?」
「ん」
握られた手を握り返す。
小さいのに心強く思える。
この世でたったひとつ、
俺の安まる場所だ。
「私は、天元が思ってるよりも
繊細じゃないと思うよ。
他の人だったら許せない事でも
天元だったら絶対に許しちゃうと思うんだ。
この手の何が汚れてるのかはわからないけど
例えば、…んー…
誰かを手にかけてしまったとしても、
それは天元の意思じゃなくて
どうにもならない理由があったと思う。
自分の都合のいいように、
天元を正当化しちゃうんだ」
へへっと笑った睦がやっぱり眩しくて
こいつには敵わないと思った。
確かに『誰か』を手にかけた。
そしてお前の言うように、
俺の意思じゃなかったよ。
何も話す前に、俺のことを理解してくれて…
「ありがとうな…」
心の限り抱きしめた。
本当は知りたいに決まってる。
でも無理やり聞き出す事をしない
睦の優しさを、…強さを尊敬する。
それから、
「あ、そうだ!」
こうやって、
「私、天元しか好きになった事ないよ?」
ちゃんと、
くそ真面目に俺を相手してくれる細やかな所、
「俺お前の事だいすき」
そう、だいすき、だわ。
「えぇ…?ふふ、うん。私もだいすき」
「初恋、長ぇなぁ?」
「うん、長いねぇ。まだまだ続きそうだよ」
「終わる気がしねぇな」
「しない。困ったね」
「口づけしていいか」
「へ…?あ、…はい、どうぞ…、」