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【鬼滅の刃】予定調和【宇髄天元】

第37章 初恋





「ほんとに来て欲しかったんです…」

「毒もねぇのにそんなに怖ぇかな…」

……

「違います。蜘蛛抜きでです」

「あ、…あれ?そうか、え?俺に?」

「はい。来て欲しかった…
だから来てくれて…嬉しかった…」

私から、そんなふうに言うなんて
滅多に無い…と思う。
だからほら、宇髄さんもびっくりしてる。

でも言わずにいられなかった。
だって本当に、苦しいくらい会いたかったんだ。
力いっぱいしがみ付くけれど
言葉でも伝えなければ
自分の気が収まらなくて。

「もっと、
ぎゅってしてもらえばよかったって思ってました」

「…睦が、
そんなこと言うの初めてだな…」

信じられないように、
戸惑うように、
でも幸せそうに
私を抱きしめてくれる。

「…あ、私びしょ濡れです。
宇髄さんまで濡れちゃうので…」

「全然。……着替え、するか…?」

「…はい、」

「じゃあ…ほら」

帯の結び目に手をかけた宇髄さんは
器用に解いて、あっという間に緩めて行く。

「え…っ、自分でやります…!」

「お前は美しいくせにホンット野暮だねぇ…」

台詞とは裏腹な優しい声。

忘れかけていた、この声。


それから、そっと口づけをくれたっけ…












「……!…睦…!」

「はいっ!」

肩を揺さぶられてやっと返事をした私に
ホッと息をついて

「全然大丈夫じゃねぇな」

心配そうに背中をさすってくれる。

「あれ…っ」

台所にいたはずが、
なぜか彼の部屋にいた。

そうか、さっき『休もう』って言われた気がする。

「なんかあったなら話せよ?」

「ううん、なんにもないよ」

「よくもまぁそんな見えすいたウソが
すんなりつけるモンだなお前は」

なんですって⁉︎

「昔っからちっとも変わんねぇなぁ…
ウソで自分のこと隠して」

「そんな事してたかな…」

「今もしてるだろ?……いや、」

何やら思案顔になった天元は
顎に手を当て

「最初はもっと素直だったな…」

私の心臓を抉るような事を言った。

いえいえ、心臓を抉るなんて
そこまで大したひと言ではなかったはず…
でも
今の私にとっては
そうなるに充分だったのだ……


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