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【鬼滅の刃】予定調和【宇髄天元】

第37章 初恋





「…なんか、企んでます?」

「何の話だ」

彼は呆れて目を細めるけど、
…だって、あんなふうに思っていた所に
ひょっこり現れるなんて
どう考えてもおかしいじゃない。

おかしいけど…
ものすごくこの人に会いたかった私は
傘を彼に手渡して
そのままぎゅっと抱きついていた。

だって抱きしめてほしかった。

「…どした。淋しかったか?」

長い腕が私を抱きしめてくれて
この、ちょっと息苦しい感じが
私の胸を締めつける。

返事の代わりに
抱きつかせた腕に力を込めると

「俺も会いたかった」

そう言ってくれて
あぁ、私だけじゃなくてよかった…
って、心から思った。
こんなに落ち着く場所、
他にはありはしない。

こうやって会える時間がこんなに愛しいなら
会えない時間も、いいかなぁ…
…なぁんてね。

「あっ!何だよお前。
傘さしてんのに何でこんな
びしょ濡れなんだ、カゼでもひいたらどうする」

イラついたように言うと
私から傘を取り上げ、
肩を抱いて立ち上がらせた。

「やですー。家には入りません…」

「何だと?」

「だっているんだもん…」

「…いる?」

カッと目の色を変えて
家の方を睨む宇髄さん…

絶対勘違いしていそうだけど。

「…いつもあなたが追っているような
物騒な生命体ではありませんよ」

「ンな事ぁわかってんの」

気配しねぇし、と続けた彼は
ぎゅうっとしがみつく私を見下ろして、

「…んな事すんの珍しいな」

少しだけ嬉しそうにした。
喜ばせるためじゃないのに。

「思い出しただけで寒気が…」

「寒気じゃねぇだろ。
ほんとに寒いんだよお前は」

濡れた前髪を掻き上げてから、

「あーこんな服じゃ拭いてもやれねぇ。
中行くぞ」

『隊服』なるものを着ている彼は
袖もなければ裾もない。
それがもどかしかったのか
強引に縁側へと私を連れて行った。

「いるからやなんですってばー!」

「何がいても、
睦に風邪ひかすよりいい!」

「糸出す足おばけがいるー!」

「蜘蛛なんかオモチャみてぇなモンだろ」

「おっきいんですよ⁉︎」

私が手を思い切り開いて
大きさを示してみせると

「はっ、何だそんなもん」

あろうことか鼻で笑った。


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