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【鬼滅の刃】予定調和【宇髄天元】

第37章 初恋





きっともうすぐ、大きなお祭りがあるから
それに向けて
こぞって準備を始めたのだろう。

女の子って、可愛いなぁ。
ちょっとでもきれいにしたくって、
いつもと違う自分になれたら力が湧いて来て
…すごくよくわかる。

私も、そうだから。

仲良しさんでお揃いの物をつけるのもいいな。
私には、そんな友達、いないけど。

…あ、蜜璃ちゃんなら
つけてくれるかもしれないな。
私となんかじゃ嫌かなぁ…?

そんな事を思っているうちに
お客さんは更に増えて
私はてんてこまいだった。

帰ったら帰ったで、急な雨。
干してあった洗濯物を急いで取り込んだ。
ぎゅっと抱えたから洗濯物は無事だったけれど
代わりに私はびしょ濡れだ。

あー…
今のでいっぺんに疲れた。

今日は…ごはん作る力が出ない。
ごめんなさいおじちゃんおばちゃん…

手拭いで髪を拭こうかと抽斗を開ければ
掌くらいの蜘蛛がもぞもぞ出てきて…
声にもならない叫びを上げて
バシンと叩きつける勢いで抽斗を閉めた。

ソレと同じ家の中にいたくなくて、
傘をさして庭にしゃがみ込んで
雫に打たれる真っ赤な椿をジッと見ていた。

今日は、上手くいったのか
いかなかったのか…


あぁ…何にせよ
私は今夜、ここで一夜を明かすのか。

なんて哀れな私。

ここでこんな事をしていると、
昔を思い出して悲しくなった。
ばかみたいだ。
蜘蛛さんには、出て行ってもらうように
努力してみようかなぁ…
でも、そんな気も起きない。
きっといつもの私なら
そんな事もできたんだろうけど
今日の私はひどく落ち込んでいるから…
無理かも…

なんだか急激に切なくなって…

苦しくなって、
淋しい…

今すぐ会いに来てくれないかなぁ…
そしたら私、
一生ついてくのに…

「椿、きれいだな。
けど…ソレ今見なきゃダメなのか」

そう声をかけられて
ふと目線を上げると
傘の隙間に
見覚えのある足元が覗いていた。

両膝にそれぞれの肘を乗せて
長い指がくいっと露先を
めくるように持ち上げる。
するとそこから
不審げな瞳が覗いた。

あー…困ったな…
私、一生ついて行く事になっちゃった…


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