• テキストサイズ

【鬼滅の刃】予定調和【宇髄天元】

第36章 満つ





皐月の指差したところは、
最初の枝が分かれている部分。

その通りだった。
あそこに足を掛け損ねて、皐月は落ちた。

「あんなとこまで⁉︎すげぇな皐月!」

大きな手が、小さな頭を撫でる。
何度も何度も。

叱られていたはずが急に褒められて、
皐月は声が出せなくなった。
幼い頭が、フル稼働しているんだろうな…。

「なかなかあんなとこまで登れねぇぞ?」

ニッと笑ったお父さんにつられるように

「うん!」

皐月は笑顔を咲かせた。

なんだかんだ言って、お父さんは甘いから
叱られて泣きそうだった皐月が
可哀想にでもなったんだろうな。
笑わせてあげなきゃみたいに、
思ったのかもしれない。

だから僕は起き上がった。
痛む体を無理におして。

「おい、無理すんな。
どこケガしてるかわからねぇんだ」

僕を気遣ってくれるお父さんとは対照的に

「にに、たいのないない?」

皐月に勢いよく飛びつかれ、
節々に電気を通したような痛みが走る。

皐月を受け止める事だけに集中しすぎて
自分の事を忘れていた。

「ないないよ?もう大丈夫…」

無理やり笑って、
それでもそんな引き攣った笑顔に
ごまかされてくれる幼い皐月は

「いかったねぇ」

僕の頭をぺちぺち叩く…
本人は撫でているつもりなのだけど。

「はー……こーいうトコね…」

お父さんは僕を眺めて
納得したように数回頷いた。

「……何が?」

「いや…こうなんだなって思っただけだ」

……

「だから、何が」

「さ!皐月、兄ちゃん運ぶから、
もう部屋に行きな。
後で姉ちゃんと遊ぼうな」

「ににはー?」

「兄ちゃんは休憩だ」

「僕なら大丈夫だよ!」

何勝手な事を言ってくれてるんだ。

「今日は大事な日だって知ってんだろ」

軽く睨みを効かせるお父さん…
本気だ。

「知ってるに決まってる」

僕も、お父さんを睨んで見せる。
皐月のためなら無理だってするのだ。

「今無理して、夕食時にでも
具合悪くしたら……わかってんだろうなぁ」

……そうか。
皐月のためにご馳走を作るって言っていた。
本人も知っているのだから
楽しみにしているに違いない。


/ 2219ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp