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【鬼滅の刃】予定調和【宇髄天元】

第36章 満つ





「あら……んー、そっかぁ。
やっぱり私には天元しかいないなぁ…」

くるっと身体を返して
正面から抱きついてくる。

こっちからも抱きしめてやったその時…




「ににがしんだーっ」



皐月が大泣きしながら台所に入ってきた。

びくっと身を縮めて、
離れようとした睦を力尽くで抱きこんで

「…お前は何回睦月を死なすんだよ」

ここまでくると可笑しくなってくるな。

「しんだって何⁉︎」

ぷっと吹き出した俺を尻目に
睦が皐月に慌てて訊いた。
それなのに、

「……おかぁ、どっかたいたい?」

皐月は俺に訊き返す。
しかもちっとも関係ない事を。

「…いいや、痛くねぇよ?」

「なんでぎゅう?」

涙をなみなみと湛えた瞳のまま、
不思議そうにしている表情は
なんとも可愛らしい。

そう、皐月は可愛い。
でも睦は、それに輪をかけて

「可愛いから」

ただそれだけ。
簡単な話だ。

「えーいいなぁ、さっちゃんは?」

「皐月も可愛いよ」

「じゃあだっこー」

短い腕をめいっぱい伸ばして
とたとたと拙い歩きでこちらに向かってくる。

可愛いからだっこくらいしてやるが、
もっと可愛いので手いっぱいなんだよな…。
だから、

「…兄ちゃんはいいのか?」

涙のワケを思い出させてみる。
睦月のヤツ今度はなにで死んだんだ。
すぐ皐月を泣かせやがる。

ぴたりと足を止めた皐月は、
思い出したかのように
ぼたぼたと涙を零し、

「おちたーぁ」

「どこから」

「きー」

「キー?…き、…」

「木から落ちたの⁉︎」

今まで黙って
やり取りを見守っていた睦が
俺の陰から顔を覗かせ
皐月の言葉に食いついた。

「おちたー!ににたいたい!」

「天元…!」

こんな事していられないと
睦は慌てて俺から逃れようとする。

「俺が見てくるから、睦は鍋の番。な?」

大丈夫、の意を込めて
頭を撫でてやると
仕方なさそうに頷いてくれた。

俺は皐月を担いで
足速に庭へと急ぐ。

俺の息子が木から落ちるとか
あり得ねぇんだけど。
まぁ…猿でも落ちるっていうしな。
……違うか。













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