第7章 予定調和
「私のこと、悲しみからも守ってくれるんですよね?」
「…あ、ぁ…」
「…そう言われて、すごく嬉しかったな…
…私が1番悲しむ事って何だかわかりますか?」
「空腹」
「…怒りますよ。まぁ…間違ってもないけど」
「だろ?」
「うるさいですよ」
睦が俺の頬をつねる。容赦ない力で。
「いへぇいへぇ。ひゃめてくえ」
「まったく…」
ため息混じりに言うと、
「宇髄さんがいなくなっちゃうことですよ」
俺ははっと睦を見た。
くそまじめな顔。…本気だ。
「そんなに驚くことですか?当然でしょう?」
こともなげに言う睦。
…こいつは、変わったな…。
「今、全力ならそれでいいです。
そもそも、守ってもらうためにそばにいるわけじゃありません。お互い支え合っていけたら、それが一番幸せです」
…こいつは、俺より強ぇのかな。
男は力が強いが、女は心が強いと聞いた事がある。
その意味が、少しわかった気がする。
「こんな俺で、いいのか」
「こんなあなたがいいんです」
にっこりと笑った。
その顔に、ウソはなかった。
「…何、探るみたいに見てるんですか。
宇髄さんが、こんなに好きに…させたんでしょ」
言いながら照れ出して、両手で顔を隠していく。
「…お前、」
言いかけて、止まる。
続きを飲み込んだ俺に、睦は
そろりと、指の隙間から目を覗かせた。
言葉が、続かねぇ。
今のこいつに見合った言葉を、俺は知らねぇ。
でも、そんなふうに言われて嬉しかった。
…
「ありがとな…」
そんな言葉しか、出てこねえのに、
睦は頰を染めて、嬉しそうに微笑んだ。
それにつられて、俺も緩く笑ってしまう。
睦 を更に抱き寄せて、頰を撫でる。
照れて目を伏せる睦が何とも愛しくて
顔中に口づけてやる。
「…あの、…ふふ…宇髄さん、くすぐったいよ」
ころころ笑う声。
俺の胸に添える小さな手。
柔らかい髪に、陶器のような素肌。
あの時思ったのと変わらない、
こいつが隣にいれば、それだけでいい。
睦を感じる事ができるだけで、俺は幸せだ。
でもお前は?
お前は俺で…いいか?
「なぁ睦…幸せか?」
額同士を合わせて訊いてみる。
…