第7章 予定調和
力いっぱい、
俺の手を引っ張る睦に合わせて、
そのまま、外してやる。
すんなり思い通りになった睦は
少し驚いたように俺を見上げていた。
「…宇髄さん…?」
ぎゅっと、握りしめられる手。
…睦…
「なぁ睦…俺は、生きてるなぁ…」
「え…?」
「…お前見てると…お前と一緒にいるとな…
生きてるなって…
…生きててよかったって、思うんだよ。
こんなふうに思うのなんて、睦にだけだ。
俺はあの日、お前に出逢えて、本当によかった」
俺の話を聞きながら、
睦はいくつも涙をこぼした。
俺はそれを拭いながら、
それにすら幸せを感じていた。
「睦のためなら何でもしてやるよ。
でも、悪ぃが俺にはもう、前ほどの力はねぇ。
満足に守ってやる事は出来ねぇのかもしれねぇ。
あん時の約束を、守り切れねぇかも、しれねぇ」
少し心にひっかかっていた事を
正直に話して聞かせる。
『俺がお前を守ってやる』あれは、本気だった。
今だって全力で守ってやろうと思ってる。
でも…きっと、足りねぇ。
「何を言ってるんですか!」
睦は少し怒ったように言った。
「今更そんな事言われたって困ります。
あんな風に、昔の事を思い出させておいて何ですか」
俺の頬をぱちんと叩くようにしてつかみ、
目を合わせる。
「私を守り切れなかった時の言い訳ですか?
それとも、イヤになっちゃったんですか?」
「いや、そうじゃねぇよ。
お前の期待に添えないかもしれねぇのを懸念してるだけで…」
「違います。宇髄さんが勝手に自信なくしてるだけでしょう?私の期待に添えないなんて…私のせいみたいに言わないで下さい」
「…睦」
「誰が前の宇髄さんとか今の宇髄さんって言いました?勝手に負い目感じて責任逃れしないで下さいよ。私は今、宇髄さんが全力で私のそばにいてくれたらそれでいいです」
「…全力でそばにいるって何だよ」
睦はふふっと笑った。
相変わらず泣いたり笑ったり忙しいヤツ。
変わってねぇ睦に、安心する。