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【鬼滅の刃】予定調和【宇髄天元】

第36章 満つ





すると、ウソのように泣き止んで、
もぞもぞとお母さんの方に
身を寄せていく。

お母さんのことが、わかってるみたい。
自分を守ってくれる人が、
わかっているみたい…




初めて抱かせてもらった時の事も
はっきり覚えている。
小さくて、軽いのに
ものすごく重たい責任がそこにあるようで、
がっちがちに緊張した。


あんなにちっちゃくて、
僕に抱っこされて
居心地が悪くって
か弱い声で泣いていた赤ちゃんが……


「そぉんなとこ走らないのーっ!
落っこちたら……‼︎」


こんなに元気に走り回るようになっていた。
追いかけてるのに、
追いつかないのはどういうわけ?

鬼ごっこのつもりなのか
どんどん僕から逃げていくおチビさんは
縁側のヘリから
グラリとバランスを崩して…

言わんこっちゃない‼︎

僕は出せる精いっぱいの速さでそちらへ寄り、
ガッと腰に腕を通して抱え上げる。
間一髪で落とさずに済んだが、
ブワッと、一気に汗が吹き出した。

一瞬でも遅れていたら大惨事だった…!

あぁあ怖いー!
話を何にも聞いてもらえない!

でも……

「きゃーはは!たかいたかーい!」

勢いよく抱き上げられたのが楽しかったのか
全力で笑い出した愛しい妹…

「そうじゃなくて!
おうちの中は走っちゃダメでしょ?」

「んー!わぁった!
たかいたかい!もっと!」

わかってない。
絶対わかってない。

たかいたかいの事しか頭にない。


「おぉ睦月ぃ、遊ばれてんなぁ」

たまたま通りかかったお父さんが
すれ違いざまに呑気な調子で言った。

「おとぅー!」

小さい割に瞬発力が良く、
お父さんの着物をぎゅうっと掴んだ。

後ろに引っ張られたお父さんは驚いて

「おい、危ねぇなぁ。
落っこちんぞ」

僕に抱っこされているとは言え、
お父さんの襟元を掴んだら
そのままお父さんにくっついて行きかねない。
この小さな手は、意外と握力が強い…けれど、
所詮2歳児の力。
間違いなく振り落とされる所だ。

「おとぅー、たかいたかい!」

「あぁー?今しねぇよ。睦月にやってもらえ」

忙しいのか相手にせず
その場を去ろうとするお父さん。


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