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【鬼滅の刃】予定調和【宇髄天元】

第36章 満つ





過去の経験からなのか
お父さんは昂る僕を窘める。

「えーっまだ⁉︎」

「もちっと待っとけって…
気持ちは痛ぇほどわかってるから」

…お父さんも同じ気持ちって事。

そっか…そうだよね。

僕は仕方なく、そこに正座をし直した。
それでも、そわそわと身体が揺れる。

待ちきれないんだって。

そんな僕の忙しない動きを止めるように
お父さんは頭に手を乗せ押さえつけた。

「おとなしくしとけよ。
伝染すんだよ、こっちまで」

本当なら
部屋の中に飛び込みたいのを
ぐっと堪えているんだろう。

でも、僕はもうムリだよ。

だって聞いてよ、あの可愛い声!
あんな可愛いだけの泣き声
初めて聴いた。


そうして落ち着かない気持ちを抱えた2人、
しばらく待っていると、

ゆっくりと開いた襖。
そこから、
明らかに泣いていたお姉ちゃんが顔を出して

「お待たせ」

にこっと、歪んだ笑顔を見せた。

僕より早くに立ち上がったお父さんが

「弥生、がんばったな。
睦を支えてくれてありがとな」

お姉ちゃんをぎゅっと抱きしめた。

そうされて、
お姉ちゃんは静かに涙を流した。
最近稀に見る、お姉ちゃんのこんな顔。
穏やかで、でも少し疲れているみたいな。

「睦月、来い」

お父さんに手招きされて
我に返った僕は慌てて立ち上がった。


部屋の中にはひと組の布団。
そこに横たわるお母さん。
その隣に、待ち侘びた小さな…

僕はそのまますくんでしまって、
歩くことが出来なくなった。

一足早く部屋に入っていたお父さんは、
雛鶴さんたちにも丁寧にお礼をしている。

僕はただ、お母さんの足元に佇んだまま…。

「睦月…、ほら、行って来たら?」

お姉ちゃんが、
ポンと僕の背中を押した。

その声に反応したお母さんが、
ふとこちらに顔を向けて

「睦月…おいで」

手を伸ばしてくれる。

お母さん、顔が赤い。
いつもの真っ白な肌が、
真っ赤になっていた。

がんばった証拠。
自分の身を削るって、
本当にそうなんだなぁと思った。

こうやって
命をかけて産んでもらったんだ、僕も。



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