• テキストサイズ

【鬼滅の刃】予定調和【宇髄天元】

第36章 満つ





「睦月は、よくやった。
それ以上はないくらいやったんだよ。
お前がそばにいて、睦は
心強かったはずだ。
睦にしかできねぇことなんだから
俺らは、そばにいてやるしかねぇの、
悲しいことに」

もう一度、ぽんぽんと頭を撫でられた。
…小さい時と変わらない手。
あったかい大きな…。

「つうか…そばにいてやるのが
してやれる中で1番の大仕事なんだよ。
お前は逃げずについててくれた。
…怖かったよな」

「…怖かったよ。でもお母さんが…
自分も頑張るから
睦月もちゃんと見てろって言うんだもん…」

「……へぇ?…えぇ?」

驚いた拍子に、
お父さんはとうとうこちらを向いた。

「睦が?あの状態の?
そんなこと言ったのか」

「…言った。めちゃくちゃかっこよかった」

悔しいほどに。

可愛いとばかり思っていたお母さんが
あんなに勇ましく見えたんだ。


「へー…敵わねぇなぁ…」

感心し切ったように
襖を見つめるお父さんの目は、
その向こうにいるお母さんを見ていた。

さっきから、
大きな声が聞こえてくる。
産婆さんの掛け声や、
お姉ちゃんの泣きそうな声、
それに混じった、
お母さんの
長く息を吐く、音のような声…

さっきまでの唸り声とは違う…。

「…弥生の時は気を失いかけた。
睦月の時は獣みてぇにずっと唸ってた」

「え…?」

「今回は、随分とか弱いな…」

泣き出してしまいそうな笑顔…

「お父さん泣いちゃわないでよね!」

僕はハッとして
お父さんの腕を掴んだ。
その勢いにおされながらも、

「俺が?」

呆れたように呟いた。
うん!と大きく頷くと

「アーホ。泣いてる場合じゃねぇんだよ。
愛しい女ががんばってんだ。
笑って迎える準備しかねぇわ」

僕の頬をグニっとつまんで、
ニッと笑う。
割と強めにつままれて
割と痛いのに、
何故かそう言い出せなかった。

「お前もいつまでも泣いてねぇの。
にっこりしてねぇと
睦が心配すんだろー?
がんばった睦に、
とびっきりのご褒美を用意しろよ」

「ご褒美…。僕なんにも持ってない…」


/ 2219ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp