第35章 満天の星の下
「…なぁに?」
言葉を途切れさせてしまった俺を
不思議そうに見る。
「あー…いや、」
あまりにも身勝手な台詞。
さっきはそれをうまく濁せたが
今回はそうもいかなかった。
睦な瞳が、
あまりにも無垢だったから…
ごまかしなんか利かないような気がして。
何も言えなくなった俺に
甘い笑みを湛えて、
「淋しくなっちゃったの?」
とんちんかんな事を言いながら、
俺を力いっぱい抱きしめてくれる。
……淋しくなっただと?
そんなワケ、…ある。
「違うよ、大丈夫だから空見てろ。
ほら、折角いっぱい流れてんのに見逃すぞ」
俺は精一杯、見栄を張ってみる。
「天元に淋しい思いさせるくらいなら
星なんか見ないけど」
「なんでだよ。さっきまで見せろって
文句言ってたじゃねぇか」
こっちが折れた途端に
見なくてもいいなんておかしな話だ。
「いいから空見てろ」
さっきので
乱れたままの互いの服。
もし俺がその気になったら
すぐにわかってしまうような…
お互い向き合って、
抱き合って…
「うん…」
その返事自体、まるでウソをついたかのように
全身で擦り寄ってからキスをしてくる。
——おとなしく空を見てる気なんて
カケラもないようだ。
こいつのスイッチは、わかりづらい。
妖しく腰を圧しつけ
俺じゃなく睦の方が
ヤる気満々なご様子だ。
「……おい扱くな」
両手を首に巻き付かせ
圧しつけたまま、
しつこく腰を上下させるから、
「こら、勃つ」
「うん…してあげる…」
目尻を下げた表情が
もう手遅れだと言っている。
「あのなぁ…お前はなんでそうなの?」
「…ソウ、って?ヤだった?」
心配そうに目を開き
腰の動きを止めそうになるから
こちらからゆるく揺すってやった。
「…ぁ、」
「ヤなワケあるか。…睦は、
ヤるよりしてぇ事があんだろ?」
空を指差してやると、
「天元よりイイものはないの」
その指をやんわりと握る。
「あらあら、可愛いこと言うのね。
ンなことばっか言ってると
泣いてもやめてやらねぇよ?」
「可愛く啼くのは得意だけど…?」
「お前は……」