第35章 満天の星の下
俺の心を簡単に攫っていく。
それにしても
ヤケに素直だ。
こんなに簡単に、
俺に譲るなんて珍しい。
いつもなら、
我儘な程、自分のしたい事をねだるのに。
「…どうした」
「なにが…?」
ふわりと笑って、キスを繰り返す睦は
訊き返したくせに
俺の言いたい事をわかっているみたいだった。
「コレ見られるのは今だけなんだろ?
いつも見てる俺なんかを相手にしてたら
後悔すんじゃねぇの?」
「お星様より天元の方がイイって…
天元が教えてくれたんだよ?」
「は…俺がいつそんなコト…」
……言ったような気がするから不思議だ。
『オホシサマより俺の方がイイって…
わからせてやろかなって』
耳に残るのは
間違いなく自分の声。
でもそんなの、いつの事だった…?
「そうやって天元が教えてくれたから、
私はひとつ賢くなったのに」
ほめて、と言わんばかり、
頬を擦り寄せてくる睦は
もう可愛さが零れそうで…。
「なんでこんな所で、って言わねぇの?」
そんな会話を、どこかでしたな。
「…もう言わない。場所なんかどこでもいいの…
もう待てない」
話が違いすぎねぇか。
変わり身の速さに少し驚きながらも
求められて悪い気はしない。
むしろ喜ばしいコトだ。
言ったことに嘘はないらしく、
性急に俺を求める睦は
深く唇を重ねて
収まりかけていた俺の欲を
上手に引き出して行く。
ホント、奔放だねぇ…
下着の中にまで侵入した小さな手が、
我慢できないのを物語るように
強く扱き上げた。
「わかったから…」
背もたれから、少しだけ身を起こし
睦の腰を引き寄せる。
俺のパーカーを着ただけの、
下半身剥き出しな睦は
いつでもいいよと身を委ねた。
「ずっと…ずーっとそばにいてね…」
乱れた呼吸の合間に洩らした呟き。
ずっと昔から一緒にいるような感覚に囚われながら
遠い未来まで離すつもりはないと
強く強く抱きしめた。
★彡
ミ☆