第35章 満天の星の下
可愛い顔じゃない。
恥じている顔だ。
彼の言う通り、
場所なんか関係ないのかもしれない。
でもちょっと…
あまりにも開放的すぎて落ち着かない。
つかまる場所が欲しいと言うか…
心許ないのだ。
裾を掴んだままの手の甲に
口づけをされて変な気分になる。
「…進めようとしてない…?」
「んー…」
肯定とも否定とも取れる返事をして、
長い腕を伸ばすと
心許ないと思っていた私の手を握ってくれた。
私はその親指を握り返す。
この人の手に触れるのが大好き。
「なぁ…コレ、外せよ」
ねだるように
その手の甲のあちこちに口づけを落とす。
力づくでどかせばいいのに、
そうしない。
私にさせようとする辺り、
あざといというか…。
「部屋、で…」
手を置いた場所が場所だけに
おかしな気分が止められない…
「あし、っ」
閉じたくて力を入れるのに
「脚?」
ぐいっと更に圧し開かれて
ついでに手の甲にも強く唇を押し付けられた。
そのせいで自分の手も
秘部に押し付ける事になって、
「やめて!」
「やぁだね」
そのまま皮膚の薄いところに
甘く歯を立てられる。
「そんなところ嚙まないで…」
手の甲に痕なんか残ったら
「人前で何もできないよ」
「しなくていいのに。
ずっと部屋に閉じ込めてやろうか…」
「へ…?」
「俺だけのー」
にかっと笑われて…
本気なんだか、ふざけてるんだか…
その感じが
色っぽいことをしようとしているには見えなくて
揶揄われているのかもしれないという気にさせた。
「俺のだから、ここでするの許せ」
——意味がわからない。
☆
「ねぇ…」
「んあ?」
ぱっと顔を上げ
かち合う視線。
それを困ったように見つめ
「…天元しか見えないんだけど」
信じられねぇひと言を吐く。
「なんか不満かよ、失礼な」
俺様の顔のどこにご不満が?
「だって見るのは流星群でしょ」
それを言われちゃ
何も返せない…。
睦は俺の顔を両手で挟み
コキっと横にのけた。
「痛ぇ…」
「ここなら見えるんだけど…」
悪びれもせずに言ってのける…