第35章 満天の星の下

今の間はなんだ。
絶対なんか隠してるじゃん。

「天元…！」

問い詰めようとしたのを

「オムレツとどんぶりどっちにしよっかなー！」

遮られて……

「スパニッシュオムレツ！」

ついそちらに乗せられてしまう。
そろーりと顔だけ振り返り

「…俺スパニッシュなんて言ってねぇじゃん」

目を細めた。

「それがいい。絶対いい」

「プレーンオムレツだわ」

「淋しいー」

「時間かかるだろ」

「やだやだ。
天元のスパニッシュオムレツが食べたい」

ぶんぶんと頭を振ると

「あ″ー‼︎わかったから頭振るな！」

「やった！」

「お前わざとだろ」

「違うもんね」

棚ぼただ。
嬉しいことに。

天元の手料理大好き。

なんて浮かれてるのはいいけれど…

………しまった。
してやったりと思ったのに
もしかして私が丸め込まれたのかな、
だって、

この家においての、私の仕事は……？








「おいひいねぇ」

「ヨカッタネ」

私はるんるんでオムレツを頬張った。

テーブルを挟んで向かいに座っている天元は
私の前髪を避けながら空返事をした。

「もう大丈夫だよ」

「んー…」

そう言いながらも
まだ私のおでこを気にしているふうだ。

申し訳ないと思いながらも
食欲には勝てない私は
もうひと切れ、オムレツを口に入れる。

だっておいしいんだもん。
おいしいものが食べられるのって幸せ。

「なぁまだ冷やしとけよ。
腫れてねぇか？」

まだ言ってるの。

「そのうち引くよ。
天元も食べないと冷めちゃうよ？
すっごくおいしいのに」

「俺が作ったんだからうまいに決まってる。
それよりよぉ、」

「冷やせっていうんでしょ？
ごはん終わったらまた冷やすから…
一緒に食べようよ」

フォークに刺した一欠片を
天元の口元へと持っていく。

「……」

するとそれをジッと見つめてから
パクっと頬張ってくれた。

「おいしいねー！」

「あぁ、お前が喜ぶなら
また作ってやるからな」

咀嚼しながら満足そうに笑う。
それが嬉しくて、私も笑った。

その瞬間。天元はふと真顔に戻り

「なぁ、睦」

やけに真面目に私を呼ぶ。