第35章 満天の星の下
「ふふ、わかってるから」
もう疑わない。
私だって、そんなデジャブみたいな事
たくさんあったから。
「今は足首、痛くねぇの?」
「痛くない。…おでこの方が痛い」
押し当てていた保冷剤を少しどけて
おでこの様子を見てくれる。
「そりゃそうだ、真っ赤だもんな。
すっ転ぶにしても、頭から行くモンかね」
半ば呆れたような声。
「…ごめんなさい」
つい謝ってしまうと、
「そんなことを言わせてぇんじゃねぇのー」
更に呆れて、
私の手を取り、
天元の代わりに保冷剤を持たせた。
「持ってろ。メシは俺が作ってやるから
おとなしく座ってな」
「えぇ!ごはんくらい作れるよ!」
「いいから」
ニッと笑われて、私はまた
胸をドキッと跳ねさせる。
どうしたのかな、と思うくらい、
どきどきするんだ。
…おかしいな?
だって今更、
どきどきするような関係じゃないのにな。
「なに見惚れてんだよ」
ぷっと吹き出して
私のほっぺたをひと撫ですると
すくっと立ち上がり
キッチンの方へと行ってしまった。
「私が作る!」
天元を追って立ちあがろうとした私を
キッと睨みつけ、
「座ってろ」
ぴしゃりと言い放つ。
…
「だって…」
「ケガしてんだぞ。
じっとしとけ」
「居候なのに、ごはんくらい作らなきゃ!」
家賃は払わせてくれない、
必要なものは買ってくれる、
食材だって全部天元もち…
「余計なこと考えなくていい!」
「考えるよ!
だって、私ここに置いてもらってるのに
何にもしてないじゃん!」
「お前はここに居ればそれだけでいいの」
「居づらい!
私だってちゃんと働いてるんだよ?
お金出すなり家事をするなり
何かしらさせてよ」
「だから、
お前は働かなくてもいいって言ってんだろー」
冷蔵庫を物色しながら
天元は声を張った。
「何でよ、じゃあ私はなにすればいいの」
プー太郎か。
絶対イヤだ。
「そんなん……」
言いかけて、
振り返り、
目があって、
…そのまま。
「………なに!」
またはぐらかされるのかと
天元を睨みつけたのに、
ふわぁっと目を逸らされて
「…べぇつにぃ、」
また冷蔵庫を物色し始める。