第35章 満天の星の下
そうだった。
腰が痛いと訴えていた。
この体制でシたら睦に負担がかかる。
申し訳ない事に、
手加減出来そうにないからだ。
それなのに、
つい挿れちまうとこだった。
「悪ィ…」
圧しつけた腰を引こうとすると
「……やめ、ちゃうの?」
悲しそうな呟き。
俺はつい、笑ってしまう。
どうしたいのよ、まったく…
「痛むのをおしてまでするのツラいだろ?
大事な身体だ、無理させたくねぇの…」
「でも、…やめたくない…したい」
可愛いオネダリは大好物だが、
…今日は状況が状況だ。
「今、1回したんだし…
明日も仕事だろ?お前立ち仕事なんだから
無理したらダメだ」
そりゃ俺だってツラい。
ヌけるモンならヌきてぇよ。
でも、睦の身体が第一だ。
「大丈夫…っ!」
「大丈夫だったら最初っから言わねぇだろ」
「そうだよ、天元ならなんとかしてくれるって
思ったから言ったんだもん」
「なんとかって…」
「やめてもらうために言ったんじゃなくて…
上手にして欲しいの」
無茶な…
「あのなぁ…」
「ここまで言わせておいて放置するの?」
「そうじゃなくて…」
どうわからせようかとしている所へ、
「いい…じゃひとりで、」
むくりと起き上がった睦は
脅しではなく
本気で俺を諦めたようだった。
あーあ、俺のこの愛が届かねぇかって。
だいたいひとりなんかでできねぇくせに。
「やり方知らないでしょー
睦ちゃんはー」
細い腰を捕まえて引き寄せる。
「天元のマネして…」
「はいはい、まったく…」
背中を、自分の胸にもたらさせて
後ろから抱きしめた。
「…物のことか?」
「……なにが?」
「忘れ物?」
一瞬考えて、
「あぁ…」
睦は腰を抱きしめている俺の腕を辿って
ぎゅっと指を握った。
「物理的な話じゃないよ」
「そうだろうな…」
職場にスマホ置いてきた、
みたいな話じゃなさそうなニュアンスだった。
「気にしてくれるの?」
頭のてっぺんを俺の胸元にずりずり擦り付けながら
こちらを見上げる。
…随分と嬉しそうだ。
「そりゃ、睦の事だからな」