第35章 満天の星の下
「ちがう⁉︎」
睦の胸元から
がばっと顔を上げると
余裕の笑みを浮かべた睦…。
「大好き、なの。
んー…?愛してる、かなぁ?」
「……俺を弄ぶのかよまったく…
…ほんと、いい女」
睦の唇を喰うようにキスをする。
それを待っていたのか、
睦はするっと俺の頬を撫でた。
「でも、」
「んー…」
キスの合間に
躊躇うような声。
大方の予想はついている…
「ゆっくり、してね」
ゆっくり…
「…どうだろうな」
額を合わせてキスを中断した。
オハナシ合いが必要か。
「カラダ、つらいか?」
「…さっきので、…腰がヘン」
そう言うだけあって睦は逃げ腰。
でもあんまり止まりたくない俺は、
そんな睦の両腕を
頭の上でまとめ上げ
その内側の柔らかいところを
かぷっと甘嚙みする。
「や…っ痛くしないで、」
びくっと全身を竦ませて、
腕を下ろそうと力を入れた。
「ん…わり…」
お詫びと称して、
そこをペロリと舐め上げると
「ひぁ!くすぐったい…!」
今度は身を捩って逃げようとする。
「俺のオヒメサマは敏感で可愛いな」
どんな些細な事にも
いちいち反応するのが愛しくて
俺はつい、意地悪をしてしまう。
「………」
「……睦?」
突然、固まったので、
機嫌を損ねたのかと
一瞬胸が騒いだ。
だが表情の感じからして…
そうでもなさそうだ。
ちゅっとキスしてやると
ぱちりと瞬きをして、
さっきの俺の台詞から
あるワードを口にした。
「…オヒメサマ…?…って、言った?」
睦の視線が俺へと帰ってくる。
「…あぁ、今言ったな俺」
「……前にも、言った?」
やけに呆けたように言うから
俺も何だかおかしな気がして来た。
…なんであんなこと言ったんだ?
「いや、…どうだったろうな…?」
「なんか…言われた事あるような気がする」
「そう、か…?」
そんな曖昧な返事をしたが、
それは俺も同じ気持ちだった。
でも、とりわけ変わったワードでもない。
別に普段口にしたって
違和感があるような言葉じゃねぇと思う。