第35章 満天の星の下
「……ねぇ天元、
私何か大事な忘れ物してきたかも」
ベッドの中、
互いの熱もさめやらぬ中、
睦がぽつりと言った。
ひどく、淋しそうに。
……
「忘れてんのに、大事なのか?」
「大事なのに、忘れたんだよ」
何のことだ。
こいつはたまに、ちょっと変わった事を言う。
「だから困ってる…」
俺の腕の上に頭を預けて、
ころりとこちらに寝返りをうった。
縋るように俺を見つめるから、…
「大丈夫、そのうち思い出す」
適当にあしらったつもりはないが
それしか言葉が見つからない。
「…それとも、忘れさせてやろうか?」
その不安ごと。
思い出せずに悶々としているのなら
むしろ忘れてしまった方がいいだろう。
「えぇ…?ちょっ、と…」
するりと裸の背中を撫で下ろされて
睦はクッとそこを反らした。
先を求める俺に、顔はしかめても
大きな抵抗はしない。
「待って、今したとこ…っ」
「いくらでもできるんだよ」
「おばけっ」
「睦だって足りねぇくせに」
俺の手に馴染む
睦の胸の感触を味わっていると
切なげに眉を寄せ、
「足りてる…っ、けど…もっと、したい…」
息を乱しながら
可愛い事を言ってくれる。
「ンなコト言っていいのか?」
「ん…っ」
「ほんと、終わんねぇよ?」
「ずっと…?」
心なしか嬉しそうだ。
「あぁずーっと」
「ふふ…いいよ」
細い首筋に嚙みついて
「ウソつけ。すぐ泣くくせに」
両脚の間に膝を割り込ませる。
「泣いても、いいの」
肩から背中を確かめるように辿る
小さな手は
いつもより少し熱く感じた。
「泣きながら善がる睦、
すっげぇ可愛いから
絶対ぇやめてやらねぇぞ」
そう、先に宣告しておく。
「私を泣かせて、悦ぶの…?」
「泣いて悦ぶのは、お前だろ?」
意味を掏りかえてやると
睦は少し驚いて、
それからふわりと微笑んだ。
「天元だと、すっごく気持ちいんだもん」
「はいはい、すきってコトね…」
相変わらず可愛いのね。
「ちがう…」