第34章 反抗期
「あのチビだった睦月が、いっちょ前に
反抗期なんか迎えやがんの。
…ちっと早くねぇか?
もっとゆっくりでいいんだぜ?」
淋しげに眉を下げるも、
「鬱陶しいな!
お姉ちゃんと一緒にしないでよ…!
あ……」
睦月はしまったと私を見た。
…さっきの事を思い出したようだった。
天元に暴言を吐いて
私が、怒ったこと…。
さすが、洞察力には長けている。
弥生の変化に気づいていたなんて。
弥生がいまだから、
睦月の反抗期はまだ後だって
勝手に思っていた…
まさか、時期同じくして迎えるとは…
しかも矛先が見事に分かれて。
まぁおかげで
助かったは助かった、かな?
だって、2人からいっぺんに
攻撃されでもしたら
私は精神的に耐えられないと思うから。
「僕は、お父さんが怒るのわかってるから
お母さんに反抗したりしないもん」
「俺には平気で反抗してくるんだな…?
それで俺が怒るとは思わねぇのかよ」
「お父さんは怒らないもの、
お母さんの事以外では。
僕は人の道を踏み外すよう何が事はしないしね」
「さすが観察してただけの事はあるね…」
私が感心すると
睦月は嬉しそうに笑った。
「うん…!大好きなお母さんだからね!」
「え…お父さん、じゃなくて?」
「お母さんが大好きだから
お父さんみたいになりたかったんだ。
だってそうしたら、
僕のこと好きになるでしょ?」
「待てお前!考え方が危ねぇんだよ!」
天元はまともに取り合うけれど…
「睦月、照れ隠しにしても度が過ぎる。
やめてちょうだい、趣味悪いよ」
「……はぁい、ごめんなさい…」
しゅんと下を向く。
「天元も落ち着いてね?
どう見たって、ごまかそうとしてるでしょう?」
天元なら、
そんな事すぐに見抜けるはずなのに…。
さっきので精一杯だったのよ。
お父さんの事が大好きだって伝わった。
それが本人に知れて
急に、恥ずかしくなったんだろう。
その照れ隠しにすぎない。
今ならそれがよくわかる。
だから、怒りは湧いて来ない。
むしろ愛しいや。
「だからって睦を…!」
「私をダシにすれば、
天元には1番効果があるからよ」