第34章 反抗期
まったく困ったもんだ。
「睦には肩書きがたくさんあんだよ。
弥彦さんたちの娘、お前の母親、俺の女…」
「知ってるよ、それくらい」
「ほんとに知ってんのか?
ならお前、自分がおかしな事に気づいてるか?
睦を母親として扱うならいいが
お前は違うようにするだろ」
……確かに。
ものすごく甘やかされるような…
およそ母親の扱いは
されていない気がする。
まるで天元にされているみたい。
違和感はそこだ。
さすが天元。
とても、しっくりくるよ。
「だって…しょうがないだろ。
お父さんの、真似してるだけなんだ…」
ぽつりとした
小さな呟きに
私は…いや、私と天元は
目が飛び出るかというほど
驚いて睦月を凝視(みつ)めた。
「俺の…マネ…」
「僕の話、聞いてないの⁉︎
お父さんみたいになりたいって
言ったでしょ!」
睦月はほっぺたを真っ赤にして
半分叫ぶように言い放つ。
「小さい時、お父さんがかっこよくて…
あぁなりたくて、ずっと見てた。
そしたら、お母さんに優しくて…
お父さんがちょっと何かをするだけで
泣いていたお母さんがすぐに笑うんだ」
「えぇっ、待って私、泣いてた?」
「…僕、割となんでも見てるよ?」
うそっ
怖い!
睦月がいる所で
私泣いたことなんかないつもりだけど…!
「隠れて泣いてたけどね、
たまたま見えちゃう事もあるんだ。
ごめんなさい…」
申し訳なさそうに声をひそめた。
いや、謝ることないけれど…
ひどく恥ずかしいな…
「とにかく…、
お父さんってすごいなって思ったんだ。
だから、お父さんみたいになりたいって」
お父さんに憧れて、なんて…!
ねぇ可愛いじゃないですかお父さん。
「俺みたいになりたくて
真似してたのか?何だお前、可愛いな」
睦月はよしよしと頭を撫でられて
「うるさいな!やめてよね!」
子ども扱いするなと大憤慨だ。
それでも、
息子の可愛い一面を知ってしまった天元は
愛しさが溢れて止まらない様子。
「憧れのお父様に言う言葉かよ」
「うるさいったら!」
髪を巻き込みながら撫でる手を
必死に振り払おうとした。