第6章 回想2
俺自身、どうしたらいいかなんて、
わからねぇんだ。
俺を捕らえるすべてをかなぐり捨てて、
お前の元へ素直に行けたらどんなにいいだろう。
こっちの勝手な事情も知らずに、
俺の所に来た嫁たちは、
とてもよく出来た3人だった。
そしてすごい勢いで、俺の意を汲んでくれた。
申し訳ないくらいにだ。
おかしな決まりのせいで、勝手に選ばれ、
それでも、
覚悟を持って俺の所に来てくれた筈なのに、
フタを開けてみりゃ、
町の小娘にうつつを抜かしてる腑抜けヤローで、
それなのに、罵るでも蔑むでもなく、
何なら応援さえしてくれる。
お前らはそれで本当にいいのかと訊くと、
口を揃えて良いと言う。
里にいて、堅苦しかったのは皆同じ。
もはや一族にうんざりしていた俺と一緒に里を抜け
頃合いを見て、俺と決別するというのだ。
俺の方に、そんな事情がなきゃ、
4人一緒に、暮らしたんだろう。
気を遣わせてしまったと言う事だ。
頭を下げる俺に、
そんな事をするなと、言ってくれた。
好きに生きたい気持ちは、わかってくれるそうだ。
俺は、睦が居なきゃ、
きっとこの3人を、愛していた、と思う。
鬼殺隊に入ってからも、
しつこく睦をつけ回した。
でも、ある日気づいた事があった。
どうして身を隠している事があるのか、と。
身を隠した理由として、
ひとつは、初めて睦に会ったあの日、
帰り際に会ってしまったあの男…
あいつから逃げるために身を引いた。
あの男が気に食わなかった。
睦から絶大な信頼を得ていた。
そして俺を甘やかす。
あの時の俺は、ひどく警戒していた。
俺に優しくするのは、
何が目的かわからなかったからだ。
…でも、今ならわかる。
そんなの俺が、あの男の愛する睦の
『友達』だったからだ。
あの男は、睦を愛してた。
あの優しい目。
睦を、我が子同然に、可愛がっていたんだ。
でも睦は、『お父さん』ではなく、
『おじちゃん』と呼んだ。
親では、ないようだ。
細かい事情は知らねぇが、
あの男は睦の親代わり。
疑う余地もねぇ…。