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【鬼滅の刃】予定調和【宇髄天元】

第6章 回想2




「何だ、お友達か?」

男は俺を、優しい瞳で見ていた。
すると睦も、俺の方を見て
少し考える素振りを見せると

「…うん…そうだよ!」

と、言った。
…オトモダチ?
俺と、睦が?

「そうかそうか。
良かったなぁ、お友達ができて」

男は心底嬉しそうに睦の頭を撫でた。
俺は、その手を見つめる。
…俺も、そうしてやりたかった。
ボーッとしていると、男は俺のそばまで来て、

「仲良くしてくれてありがとうな」

そう言って、俺の頭も撫でたのだ。
そんな事をされたのは生まれて初めてで、
どうして良いのかわからなくなる。
固まった俺になお、
にこにこと笑いかけてくるその男。

何だこいつ。
なんか、ウラでもあんのか。くそ。

何だか、ひどく悔しい気持ちになって
その手をはたき退けると、
あいさつも無しに、そこから逃げ出すように
俺は走り出した。
睦の事、気にはなったが、
そんな事を言っている場合じゃなかった。
俺の心をあったかくさせる、
この気持ちは何なのか、ずっと考えていた。




俺があの場所へ行く事はもう無かった。
こっそり様子を見に、
里からおりて来る事はあったが、
あいつに会う事はしなかった。
あいつは、あの空き家に行って、
俺を探すような素振りを見せる事もあった。
その度に、その場に降り立とうかと悩んだが
やっぱりやめた。
あの店を手伝う姿も、
おつかいで隣町まで行く姿も、
事あるごとに、あいつを見ていた。
あんな約束を取り付けておいて、この始末だ…。
そのうち睦は、日々の生活に追われ、
会えず、
会いにも行かない俺の事を、忘れていった。
それでも俺は、
時間を見つけては睦を見ていた。
相変わらず、見てるだけ。
もう会う気は、無くなっていた。

見る度に、美しくなっていく睦。
笑顔も増えた。
この5年の間、手を汚して生きてきた。
闇の世界で、息を潜めて。
お前のように、清くは生きられねぇ。
…俺はもうすぐ、15になるよ。
そんな俺を、お前はどう思うだろう。
俺が言い出した約束を、自ら違えるなんて。





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