第34章 反抗期
女同士で色恋の話に花を咲かせながら
あぁでもないこうでもないと……
……色恋…?あれ?
「おい弥生、お前…」
「あっ、そうだ!手袋は?お母さんの…
白いレースの!」
俺の言葉に弥生が話を被せて、
「手袋?うん、いいよ」
それを受けた睦が立ちあがろうとすると
「あ……でも、…いいや。手袋は…」
言い出しっぺの弥生が
照れくさそうにして俯いた。
「えぇ?いいの?」
睦は不思議そうに目を見張り
その場に座り直した。
「可愛いと思う、けど…」
そしてぱんと手を合わせ
「あぁ!そうだね、
手つなぐかもしれないしね!」
その手を口元に添えて嬉しそうに笑った。
「誰とだよ‼︎」
ついがばっと起き上がった俺に
「誰ともしないよそんな事‼︎」
弥生が悲鳴のような声を上げた。
指先を揃えて口元に置いたまま
くるぅりとこちらを向いた睦の目は
据わっている…
…なんだ。
黙れという事か。
それとも…
「弥生、先に着替えていらっしゃい?
その後に髪を結ってあげるからね。
髪飾り出しておくよ」
「わかった!」
弥生は大事そうに着物を抱えて
いそいそと部屋を後にした。
ぴたっと閉まった襖。
廊下の奥に弥生の気配が消えると
膝立ちになり
とたとたと俺の前まで進み出て
すとんとそこに座った。
少し崩れた座り方が可愛い…
「天元っ」
「なぁんだよ」
気ィ悪ィなぁ。
…あれ?
何が?
「せっかく楽しく話してるのに邪魔しないで」
むぅっとむくれて
睦は抗議の声を上げた。
「楽しいのは大いに結構。
だがお前、アレ知ってて行かすのか⁉︎」
「アレって」
「弥生は誰とどこに何しに行くんだよ。
しかもこんな朝早くから!」
「弥生にだって色々あるのよ!
いいじゃない、楽しそうにしてるんだし」
「楽しきゃ何してもいいワケじゃねぇだろうが」
「あの子だって自分でちゃんとわかってるよ」
「何をわかってんだ。まだほんのガキだぞ」
「ガキなんかじゃないよ。
ちゃんと自分で物事を考えられる
しっかりした子に育ったもの」
「それは、わかるが…
アレ男なんじゃねぇの…?」