第34章 反抗期
ごそっと寝返りをうつと、
朝の眩しい日差しが
俺の目を直撃した。
瞼を閉じたにも関わらず、
この眩しさは……
この時季、朝は遅いはず。
俺とした事が、寝坊をしたらしい。
「あれっ?」
つい声が出るほど驚いたのは、
腕の中にいるはずの睦がいなかったから。
…俺より、早起きした?
まさかの事態に俺は息をのんだ。
この俺が寝坊したほど交わったというのに、
…
睦が俺の腕から抜け出た事にも
気づかないほど俺が疲れ切っていたというのに
睦はそうじゃなかったって事か。
…と思うと、…
焦るけど⁉︎
起き上がろうと
掛け布団をめくりあげた所に、
……
すぐそばに正座をする睦の背中。
そこへ、
「お母さん‼︎」
どたどたと大きな音を立てて
弥生が部屋に飛び込んで来た。
「私の着物は⁉︎」
イラついた表情。
威圧的な物言い。
…可愛くない態度。
…………。
「今日着るからって言っといたよね⁉︎
どこにも、ないんだけど…」
弥生は嚙み付くように喚いていたが
そばの布団の上に俺が居るのを見つけて
「どこに…あり、ますか…」
その勢いをみるみる失わせていく。
なんなら、その顔が青ざめていく勢いだ。
俺の前でだけか。
許さねぇぞ、の念を込めて
ジトっと目を細めてやると
ぱっと目を逸らし動揺を見せた。
「ちゃんと終わらせてありますよー。
はい、どうぞ」
きちんとたたんだその着物を
睦は弥生に差し出した。
それを見た弥生は
すとんとそこに正座をして
「ありがとう」
礼儀正しく受け取った。
少し頬を染め
嬉しそうにその着物を膝に乗せて
愛しげに両手でそれを撫でる。
…弥生、そんなにその着物を大事にしてたのか。
「それから、これ」
睦はもうひとつ、
毛糸で編んだようなものを
弥生の前にふわりと置いた。
「…これ…?」
「もう冷え込む日が多いから…肩掛け。
編んでみたの。慣れない編み方したから
時間かかっちゃって…。
そのせいでシミ抜きが遅れたのもあるの。
ごめんね」