第34章 反抗期
「うん…そう、?」
結局は懐が深いという事なのよね。
もともと面倒見のいい人だもの。
兄貴肌というか。
私以外にだって
ちゃんと優しく接してくれるし
少しの失敗も豪快に笑い飛ばしてくれる。
私はそれを見ているのが大好きなんだ。
ただ私に対しては、
それに輪をかけて度量の大きさを発揮する。
だから申し訳なくて、
幸せだ。
「そうそう。
睦はそのままでいいって事だ」
「甘やかした分だけ、
ダメな人間になってくのに?」
「ないだろ睦に限って。
甘えてんのは俺にだけだし、
睦はちゃんとしてるからな」
下ろした髪を後ろに撫で上げて
覗いたほっぺたに優しく唇が触れた。
「…買い被りすぎだよ…?」
反対側のほっぺたにも触れた唇が、
「全然…。足りねぇくらい」
そっと囁いてから
大きな手が私の肩を撫で下ろす。
同時に夜着も乱されて
あたたかい手が直に肌へと触れた。
「ふ、…っ」
たったのそれだけで全身が震えて
声を上げてしまいそう。
どうにか堪えたくて
天元の胸元をきゅっと握りしめ
そこに顔をうずめた。
「……」
顔を伏せていても、
無言で私の方を窺っているのがわかる。
指先が震えるくらい
彼の夜着を握りしめている私を見ながら、
曝された肩にゆっくりと歯を立てる。
厚い胸にズッと擦り付けたおでこ。
訪れた甘美な痛みに耐えた。
そこを甘嚙みされると全身から力が抜ける。
気持ちよくて、もっと差し出したくなる。
そして、次を期待してしまう自分が、
ひどく悪い事をしているような気になった。
「…ん、ぁ…っ」
わざとそうっと食んでは、
大きく唇で挟んだそこに
今度は強めに嚙みつかれて
「んぅ、んん…」
痛いはずなのに気持ちよくて
その痕を舌で優しく慰められる。
「睦、?」
「え…?」
名前を呼ばれて、つい上げた顔。
視界いっぱいに愛しい人が迫っていて
「…ちょっと…我慢できねぇかも…」
追い込まれたように顔を歪めた。
そんな顔見せられたら、
禁句を口にしてしまいたくなる。
でも、それは言うなとばかりに、
激しく口唇を塞がれた。